おし、分かったじゃあ序章だけでもここに置いておくわ

 二月中にプロット完成しなかったけど、退路を断つために序章だけ置いておきます。

 でも、これって序章だけ読んでもよく分からないのよねー(笑)


アウアウアウター

序章


「海外旅行の経験は?」
 対面の席に座る少女が淡々と聞いてくる。
 彼女はまるで人形のような少女だった。中学二年生くらいだろうか。小柄でとても可愛らしい少女である。
 美少女の質問には元気よく応えるのが男の定め! 俺は右手を大きく挙げて素早く答える。
「おうよ! 北海道から九州まで旅行しまくりや!」
「そうやなぁ。翔士(しようじ)は昔から色んな所行ってるもんなぁ……って、それは国内旅行やろうがっ!」
 ぱぁん、と俺の頭が傍らにいた友人の妹――笠原悠奈(ゆうな)にはたかれる。
「痛っ、てめー、ツッコミに力入れすぎやろ」
「あ、ごめん……じゃなくて、この状況は何? おかしいでしょ? さっきまで私達神戸の街を歩いてたじゃない!」
 と笠原妹は辺りを見回す。
 俺たちが居るのは飛行中のジャンボジェット機の機内である。全ての窓はカバーが下ろされて外は見れない。しかし、足下からわずかに伝わる震動が現在飛行中であることを明確に主張している。前に北海道に行く時に乗った飛行機も大体こんな感じだった。
「あー、そっかお前は気絶させられてたから知らんもんな」
 戸惑う笠原妹の反応に俺はうんうんと頷く。
「あれからもう六時間くらいは経ってるな」
「えぇっ! 素で(マジで)? 素で(マジで)言ってんの?」
「ああ、素だ(マジだ)」
 慌てふためく笠原妹を見て俺は思わずにやにやする。俺はおろおろしている人間を見るのが好きだからな! 悪趣味だけど!
 まあそれはそれとして。
「いやー、実はお前が突如黒服のオッサンにとっつかまって、で、目の前のこの美少女が現れて『あなたの力が必要。ついてきて』、とか言うからホイホイついてったらベンツに乗せられて気付いたら関空に行って空の上だぜアッハッハッ!」
「えっ? 黒服? 関空?」
 俺の言葉を聞いて笠原妹はきょとんとして必死で俺の言葉を頭の中で反芻する。
 やれやれ理解力が足りないな。
 仕方ないので、俺が最初から説明してやる。
 この俺――周(あまね)翔士は夏休み、久しぶりに引っ越しした友人が地元に来るとのことで神戸の街で待ち合わせていた。が、そこにいたのは何故か妹の方。仕方ないので笠原妹と街を歩いてたら、何故か黒服の男達に囲まれた。おまけに笠原妹がクロロフォルムで眠らされて人質に取られた。そして、ベレー帽のカワイイ美少女が付いてきてと言う。ついて行った結果、黒いベンツに乗せられて関西国際空港へ行き、謎のジャンボジェット機に乗せられた。ただそれだけのことである。
「って、それ誘拐やんけっ! 何へらへら笑ってんねんこのアホッ!」
 俺の胸ぐらを掴み、睨んでくる笠原妹。
「まあ落ち着けや。今更じたばたしてもしゃーないで」
 せっかくだし、まずはこの状況を楽しむべきである。怒られるだろうから言わないけど。
「落ち着いてられるかいっ! なんやねんこの状況意味分からんわっ! ていうか、お前誰やねんっ! このクソチビっ!」
 俺の胸ぐらから手を離し、びしっ、と目の前に座る謎の美少女を指差す笠原妹。つり目がちの目がより鋭くなって謎の美少女を睨んでいる。夏休みに久しぶりにあったというのに相変わらずのお転婆ぶりだ。
 しかし、そんな肉食獣のような笠原妹に睨まれても美少女は動じず、無表情のまましれっと言う。
「残念ながら、今はまだ私の素性を明かすことは出来ない。
 でも、これだけは言える。私は決して怪しい者ではない」
「人をいきなり飛行機に拉致軟禁しておいて良いヤツな訳あるかいっ! 馬鹿にしてんのかっ!」
 もっともなツッコミである。
「まあまあ、落ち着けって。どうせ今更じたばたしてもしゃーない。せっかくだからこの状況を楽しもうや」
「お前はお前で相変わらず脳天(ノーてん)パー過ぎるやろっ! この状況をどう楽しめっちゅうねん」
「で、俺らが海外旅行したことがないのなら、なんかあるんか?」
「無視かいっ!」
 華麗にスルーと言って欲しいね。
「あなたたちは日本という恵まれた環境にいて、外の世界というモノを知らない。だから、覚悟して欲しい。これから行く場所はあなた達の常識の通じない場所であることを」
 淡々と警告してくる美少女ちゃん。いやいや、無理矢理拉致しておいて覚悟して欲しいとかこの子はなかなかいい根性をしている。まあ、カワイイから許す。後ろで笠原妹が俺と同じツッコミしつつわめいてるけど、可愛くないので無視する。
「ああ、日本と違って海外は治安悪いらしいな。詐欺やひったくりも多いし、人さらいも多いらしいとか」
 と、俺は彼女に笑いかける。隣で、笑い事やないやろがっ! と小うるさいヤツがいるがともかくスルー。今は情報が欲しい。
「テレビやインターネットで知った海外を想像しているなら、それは無用な知識。捨ててしまえばいい」
 おや、それはまた極論だ。
「日本人はあまりにも外のことを知らなさすぎる。
 今、あの島国の外で何が起きているのか。そのほとんどを知らない」
「もしかして、中東の紛争地域とか、危険地域に連れてかれんのか? てっきり太平洋に向かってると思っとったけど」
 少なくとも、黒服達は英語喋ってたし、単純にアメリカ行きかな、と思ってたのだが。
 俺の言葉に美少女ちゃんは首を振る。
「その認識が間違い。世界のどこにも安全な場所なんてない。たとえ、それはあなたたちの住む日本であっても」
 美少女ちゃんの言葉に俺と笠原妹は思わず顔を見合わせる。同じ日本語を話してるからついつい同じ考え方してると思ってしまったが、目の前の相手はどうやら俺たちとは根本的に価値観とか違うらしい。まあ、髪の毛とか目が藍色だしな。
 美少女とはいえど、見た目からして実は普通ではない。
「なんにしても、あなた達の知る世界の姿など、ほんの一部でしかないことを今ここで知ることになる」
 そう言って美少女ちゃんは座席の隣にあったカバーを開く。
 太陽の光が機内に入り、思わず目をつむりかけ……だが、目に入ったそのあり得ない光景に思わず目を見開く。
「えっ、ちょっま……」
「どうしてん?」
 俺の驚いた表情に首を傾げながら笠原妹が俺を押しのけ、窓の外を見る。
 そこにあったのは――太平洋上を飛ぶ巨大な飛行物体だった。
 全長は何メートルだろうか。他に比較するものがない海上のため、遠近感覚が狂う。だが、間違いなくジャンボジェット機なんかよりも巨大だ。
 それは――翼を持った巨大なトカゲに見えた。
「ええぇぇぇっ! あ、あれなんやねんっ! おかしいやろっ!」
「いや、待て待て落ち着けや。俺たちはああいうものをよく知ってるで」
 慌てふためく笠原妹をなだめようとする俺。そう、あんなものは初めて見る。でも、知識がない訳ではない。ただ――その知識は現実世界の知識ではないはずだ。
「あれはドラゴン」
 俺たちの脳内にある常識を砕くように美少女ちゃんが宣言する。
「んなアホなっ! あんな全長百メーター以上ありそうな化けモンがこの地球に存在する訳ないやろが!」
アメリカではこれくらい常識」
「嘘こけやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 かくて、世界は俺たちの知らない真の姿を見せることとなる。



 そもそもみんな海外のこと知ってるっていうけど海外に行ったことあるの?
 的な発想で始まってます。
 まあ、哲学さんは何度か海外に行ったりしてきたけど、うん。確かドラゴンとかいたわー、マスコミには秘密ね――なんてことはさすがになく、でも、日本人に取ったら海外はきっとファンタジー。という発想が古い。
 でもまあ、きっと楽しく面白おかしくできるに違いない!
 と信じて続きを書く予定。

 つってもまだプロット整理中だから続きは大分先になりそう。
 でも頑張るよ!