小説『ラノアニ妖精ぼくえあたん!』第二話

 と言う訳で第二話。
 これでBOX-AIRの出場条件は満たした。
 と言っても後半はやや書き直す予定だけどね。



第0話>http://d.hatena.ne.jp/kaien+B/20110920/p1
第1話>http://d.hatena.ne.jp/kaien+B/20111001



 光だけだった。
 膨大な光が世界そのものを塗り替え、、作り替え、すべてを狂わせる。
 やがて、真っ白に塗りつぶされた世界を七色の光が駆け抜け、巨大な純白のピラミッドを創出する。
 それは世界の創造。人の域を超えた神の御業。
 気がつけば俺は――俺とぼくえあたんの一人と一匹は七色の異世界に鎮座する白いピラミッドの中腹に立っていた。
「「え?」」
 俺とぼくえあたんは余りにも突然のことに呆然とする。
 が、すぐさまその手に枷が付いていることに気づく。
「「あれ?」」
 そしてさらには足首にも癖がつけられていた。
「「あれぇぇっ!?」」
 驚き戸惑う俺たちをあざ笑うかのように白いピラミッドの頂点にある台座から一人の童女が現れる。
「いかにも大成しそうにないお前等に告げる」
 凛とした声。だが、その声はどこか幼い。事実現れた童女は五歳くらいの、本当に幼い子供だった。
 その格好はピラミッドから現れた癖に着物を着た紫髪の童女である。幼女と言ってもいい。
「ごだごだ小細工なんか考えず、思うがままに作品を作るがよい」
 七色の虹がピラミッドの周囲で幾つもの輪を形成し、ゆるやかな回転をしている。
 驚くほど幻想的で現実味のない光景だ。
 この俺――ワーナビー・P・フォックス20世(ペンネーム)はどこにでもいるごく普通の作家志望の大学生である。
 こんな異常事態に巻き込まれる覚えは――いや。
 俺は隣で同じく両手両足を枷で拘束された身長十六センチほどの赤毛ポニーテールの妖精――ぼくえあたんを見る。
「もしかして、これはお前の仕業か?」
 彼女は未来からやってきた電子の妖精である。なんでも俺のパソコンを媒介にしてやってきたらしい。
 その理由は――なんと俺の書いた小説が将来世界を混乱に陥れる思想を振りまくことになるのでせめてまともな小説を書くように矯正しにきたのだという。
 未来の表現規制者も余計なことをしてくれたものである。
 もちろん、俺はそんな彼らの思惑に乗る気はない。が、小説書きのテクニック論は一応参考までに聞いてやることにしているのだ。
 今目の前に起きてる超常現象も、あるいは未来からやってきたこの妖精ならできることかもしれない。
 そう思って聞いてみたのだが。
「いやいやいや、知らないって。ボクがこんなことできる訳ないでしょ!」
 ちなみに、一人称がボクなだけでぼくえあたんは男ではない。もっとも、電子の妖精という名のロボットなので性別の有無は分からないのだが。
「じゃあ誰がこんなことやるんだよ! 俺の知り合いにこんな天地創造もどきできるヤツはいねぇぞ!」
「ボクだってそんなものいないよ!」
 罵り合う俺たちをピラミッドの頂点から見下ろす幼女がため息をつく。
「聞け、塵芥共が。お前等は物語を作ることぐらいしか価値がないのだから、下らん小細工を労せず、欲望の赴くままに物語を作ればよい」
 やたらめったら偉そうでぞんざいな紫髪和服幼女。
 俺とぼくえあたんは顔を見合わせ、視線で会話する。
 ――おい、なんだよあれ?
 ――ボクが知る訳ないでしょ?
 ――俺だって知らねーよ。
 ――じゃ、あんたが正体聞きなさいよ?
 ――やだよ。あいつなんかオーラだけはめっちゃ出てて近寄りがたいもん。
 ――意気地なし! あんたそれでも男なの?
 ――うっせー、俺はこれでも人見知りなんだよ!
 ――だぁぁぁ、情けない!このチキン!
 ――なんだとぉ! 誰も! 俺に! チ キ ン な ん て 言 わ せ な い !
 ――あんたはバックトゥーザフューチャーのマーティか!
「おい、そこ。野球マンガで極限状態のピッチャーとバッターがするような心理会話を簡単にするでない。アニメ化しづらいであろう」
「んだとぅ! これくらいアニメ『巨人の星』でもバンバンされてただろうが!」
 思わず突っ込む俺。あ、つい会話してしまった。こいつ危なそうだから関わりたくなかったのに!
 いや、まあ、関わる関わらないで言えば既に手遅れなのだが。
「ああ、しておったな。でも、あれは心理会話が長すぎて、ボール投げる前にCMに行ったりと大変うざかった」
 うむうむと頷く幼女。
 なにこいつ、リアルタイムにアニメ『巨人の星』見てたのかよ。何歳だよ。
 ……まあいい、ここまで来たらもう、逃げても仕方ない。開き直ろう。
「ところで、あんたは、どこのどんなたで、なんの目的があって俺たちをここに?」
 めんどくさいので聞きたいことを全部まとめて聞いてみる。あんまり褒められたことではない。
 質問は一回につき一つか二つに絞るべきだ……てどこかで聞いた気がする。
 まあいいか。
 俺はワーナビー・P・フォックス二十世! ノリで生きていく男! 細かいことは気にしない!
「いきなり我が真名を問うとは、塵芥の分際で見上げた根性の持ち主よの」
 ふんすっ、と腕を組む幼女。
 ――うぉぉぉい、なんかいきなり地雷を踏んだくさいぞ! どうする?
 ――知らないわよ! ていうかなんで名前なんか訊いたのよ!
 ――名前を訊ねるのは人としての礼儀だろうがぁぁぁ!
 即座に視線で罵り合う俺とぼくえあたん。こいつ、機械の癖に意外と腹芸もできるのな。相変わらず未来はすごい!
「よかろう。我が何者か。耳を澄ませ、心してきくがよい」
 あ、話してくれるのか。
「我はすべての駄作と未完の女神。半端物の祝福者。キーリ・ウッチー」
 名乗ると共に七色の虹が神なる幼女の周囲を螺旋を描き、外へと拡散し、果てなき天へと登っていく。
 ――いちいち派手だな。これが神様というものか。
「キーリ・ウッチー……?」
「ウッチー・キーリ……?」
 俺とぼくえあたんは呆然と呟く。
「って『うっちーきーり』て『打ち切りの女神』かよっ!」
「えぇぇぇぇ! そんなマイノリティな事象に神様なんているの? ていうか、神様なんて非科学的な存在が居る訳ないでしょっ!
 そんなの絶対おかしいよ!」
 ぼくえあたんの発言に未完なる女神ウッチーは唾を吐き捨てピラミッドの頂点から告げる。
「失せよ、下等な塵芥。神域が汚れるではないか」
「いや、失せろもなにもキミが勝手にボク達を呼んで、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
 発言の途中、ぼくえあたんの足下ががこん、と開き、彼女の小さな体はあっさりと奈落の底へと落ちていった。
 いつまで経っても着地音や激突音が聞こえず、俺はぞっとする。
 ――おいおい、一歩間違えればこの異空間で無限落下コースかよ。こえぇぇぇぇ。
「えっ、えーっと、その、女神様がなんでまた俺なんかのところへ?」
 おそるおそる訊く俺に彼女は大仰に頷く。
「うむ。お主には見込みがある」
「……見込み?」
 幼女神は高みより俺へ指を突きつけると、高らかに告げた。
天地開闢よりクソ漫・クソゲー・クソノベ・クソ歌・クソアニ・クソ劇を見てきた妾には分かる。
 お主には駄作の才能がある!!」
「いやっほぅぅぅぅ、俺の才能が認められた……って駄作の才能かよ!!」
 うれしくねぇぇぇぇぇぇぇ! なんだよその才能!
「駄作をバカにするでない。
 貴様。フグに毒があるのを知っておるか?」
「ああ? 知識として教えられてるけど?」
 突然の問いに俺はきょとんとする。
「だが、それは先人が毒を食って死んでるからであろう。
 失敗とは成功の母。クソくだらない駄作を作れば、人は『ああは、なりたくない』と悪き手本とする。
 しかし、それでも今フグが食べられているのは、美味しいからじゃ。毒を無理矢理抜いてでも食べる価値があったから。
 だが、フグは毒があったままでも面白いと妾は信じる。食べれば死ぬがな。
 駄作も同じ。駄作であろうとも、突き抜けた輝きがあればよい。
 一部の好事家だけが分かる、『これは面白いけど売れねぇなー』『十週間でロケットで突き抜けるように打ち切られるなー』的な面白い駄作を、お主なら作れるのだ」
 うぉぉ、なんか褒められてんだけど、微妙に嬉しくない変な言い回し!
 俺はどう回答すればいいんだ!
「小綺麗な商業主義にまみれた秀作などいらぬ!
 下らん愚者の戯言など切り捨てよ!
 天に輝くその星のように! 刹那に瞬き、消え去る光となれ!」
 ……おおふ。確かに俺の理想通りの生き方だけど、こう面と向かって「一瞬だけ輝いて死ね」と言われると複雑な気分だ。
 いや、でもこの幼女神様は俺の肯定者だ。
 ぼくえあたんと違って、俺の作品を認めてくれる。……駄作として、だが。
 だが、たとえ駄作と言われようとも、面白ければなんら問題ないではないか。
 分かる人間だけが分かればいい!
 そう、俺は貫けばいいのだ! 孤高なる隠れ名作の道を!

「だめぇぇぇっ! そいつの言葉に耳を傾けちゃ!!」

 地の底より響く妖精の声に俺ははっとする。
 俺が傍らにある底なし穴に目を向けるとぶぅぅぅぅん、と何かの振動する音が聞こえた。
 そして、光の矢となってぼくえあたんが穴の底から現れる。
 おお、背中の羽根は飾りじゃなかったんだ! ちゃんと空飛べるんだ!
 現れると同時にぼくえあたんは全身に力を込め、四肢を束縛していた拘束具を無理矢理引きちぎる。
「ええっ! 意外とパワー型?」
 驚いている間にぼくえあたんの右太ももから下が突如として高速回転しだす。人間ではない機械だからこそできる芸当!
 彼女は高空に飛翔し、敵を狙い定める。
 バチバチと電撃を纏いながら彼女はそのドリルのごとく凄まじく回転する右足で思いっきり高々度からの跳び蹴りを敵へと放った!
「エレクトリカル・ドライブ・キーークッ!」
「ぐぼあぁぁぁっ!」
 彼女の凄まじい電撃回転蹴りをくらい、俺の体は吹き飛ばされ、黒煙を上げながらピラミッドの階段をゴロゴロと落ちていく。
「なんで俺がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
 激痛で思考が鈍り、流されるままに階段を落ちていく。蹴りを受けた腹部に鋭い痛みが来ているというのに段差を落ちる度に全身を鈍痛が襲う。それでなくとも激突の瞬間に受けた電撃が俺の皮膚を焼き、焼けただれた皮膚が刺すような痛みを提供してくる。やばい、なんかこのまま死んでしまう!
 この空間に喚ばれた時についていた両手両足の枷はぼくえあたんの攻撃を受けた瞬間、電撃に弱かったらしく解除されている。しかし感覚が麻痺しており、手足が思うように動かない。
 ――動け動け、早くしないと落ちる……っ!
 そう思ってたらついに段差はなくなり、俺の体は巨大ピラミッドから落ちた。
「え?」
 俺はぞっとする。ピラミッドの外にある異空間。どこまでも広がる真っ白な世界へと俺の体は落下していく。
「ちょっ、うぞぉぉぉぉぉぉぉぉ」
 死の恐怖に俺は痛みも忘れて絶叫する。だが、俺の体は何故かある重力に引っ張られて落ちていき、みるみるうちに視界に映るピラミッドは小さくなっていく。
 ――終わった。
 俺は落下しながら死を覚悟した。俺の人生はここで終わる。何もなせないままに。
 いやだいやだ。そんなこと絶対に。
 俺には。
 小説を書く理由が――。
 涙を流し、感覚のなくなってきた手をもう見えなくなってしまったピラミッドへ伸ばす。
 ――こんなことってあるかよ!
 誰か助け――。
 と思ってたら俺の体は柔らかい感触につつまれ、ぼよよよーん、と跳ね上がる。
「…………っ!?」
 俺の体は五・六回跳ねた後、反発のなくなった地面に横たわる。
「あれ? 生きてる?」
 なんとか体を起こすと、そこは先ほどのピラミッドの頂点にある台座だった。
 横で紫髪の和服幼女がくすくすと笑っている。
「おおう、びっくりしたか? 実はここ、下と上が繋がっておるのじゃ」
 俺は呆然と周囲を見回し、なんとなくポケットの中にあった十円玉をピラミッドの外に投げた。
 すると、しばらくすると、十円玉は上からぼとりと落ちてきた。
 どうやらこの空間はクラインの壺的な、あるいはメビウスの輪的な無限連続空間となってるらしい。
「なにこのデキの悪いゲームのループMAPみたいな構造」
 しかし、現実的に考えればあの落下距離だと、幾ら地面がゴムまりみたいに柔らかくても激突の衝撃で死んでてもおかしくないはずだ。
 ここはどうやら想像を絶するギャグマンガ空間らしい。
「……あ、あの、その、大丈夫だった?」
 と、背後からおずおずと声をかけられる。
 振り向くとそこにいたのは、もちろんぼくえあたんだった。非常に気まずい顔をしている。
「……って、そうだ! お前なんだよいきなり! 俺を殺す気かっ! 一瞬マジでシリアスな走馬灯に入りかけたぞ!」
 我に返って俺は怒鳴る。無限落下から生還したことにより、安心感よりも逆に不気味な不安感でこの空間の物理法則に目がいってたけどよくよく考えればそれどころじゃない。
「いやー、なんかつい、攻撃するならキミかなぁって」
「どんな判断だよ! アホかっ!」
「てへ、ペロッ」
 可愛く舌を出してごまかすぼくえあたんだが、俺はごまかされない。絶対にだ。
「……やれやれ、お主等は本当仲がいいのう」
 と、そこでいつのまにやら傍らで座布団を敷いて正座で紅茶を湯飲みで飲んでいる幼女神に話しかけられる。実にちぐはぐで自由である。なるほど、こいつは駄作の神様だ。
「誰がこいつなんかとっ!」
「……へへ、そう?」
「いや、なんでお前ちょっと照れてんだよ?」
 俺にはぼくえあたんの感性がよく分からないぜ。
「だいたい、落下しなくったってさっきのキックで俺死んでてもおかしくないか?
 普通に怪人とか爆殺できそうな必殺技だったじゃねーか。
 ……ってあれ? 痛くない? 傷が治ってる?」
 俺ははっとして自分の体を見回す。黒こげになってた服も元に戻ってるし、腹部の激痛も消えている。
 ぼくえあたんも俺を見て目をぱちくりする。
「そんな……あれだけ殺意を込めたのに傷一つないなんて」
「こらこら、今軽く殺意とか言ったな?」
「は、ははは、気のせいだよ! ボクは妖精だよ。殺意とかとは無縁だよ!」
 いざとなれば包丁を持ち出す癖に何言ってんだよこいつは。
 そんな俺たちの側で幼女神が笑みを浮かべる。
「ふっ、この妾が作った神創空間<ファグナント>ではあらゆる傷は癒され、誰も死ぬことはない」
 えぇぇぇ、普通にすごい! こいつ何者だよ! あぁ、神様だったな!
 っていうか、司ってるのは駄作の癖に神通力ありすぎだろおい!
 しかし、驚く俺の横でぼくえあたんが大げさにため息をつく。
「いやいや、神様とか非科学的な。そんなの居る訳ないでしょ」
 さすが科学の申し子。せっかく現れた神様全否定である。
 確かに彼女の言いたいことは分かる。いくら何でもいきなり現れた人間を神様と信じるのは難しい。
 でも、謎空間に召喚されたり、落下ループしたり、傷が癒えたり、ともう神様くらいしか思いつかない超常現象に出くわしている。
 その方が面白い、と思うなら俺は目の前の現実を受け入れる!
 まずは信じて受け入れる。後悔など後ですればいい。
 ……まあこのスタンスのせいで人生損してる気もするけどな! 今更だ!
「む? お主、妖精の分際で神を否定するか。まこと奇妙な妖精よの」
「いやいや、私は妖精じゃなくて未来から来た電子の妖精だし。どっちかというとアンドロイド系だし」
 ぼくえあたんの言葉に幼女神はコロコロと笑う。
「これはこれは。何を言い出すかと思えば。未来から来たロボットなどと……そんなSFみたいな非・自然的存在などいる訳なかろう」
 『不自然』(アンナチュラル)じゃなくて『非・自然』(ノン・ナチュラル)なのね。
「大地より、神や妖精が出現し、またその余剰エネルギーの発露の応用として魔術という技術などが生まれるのはとても自然なことじゃ。ありえないことはない。
 しかし、時間という自然概念を無視して未来からなにかがやってくるのは『自然的』ではない。
 またロボットがいずれ作られるのは自然の流れじゃが、今の技術かロボットが作られるのは『非自然』じゃ」
 神様による自然法則三段論法。
 神や妖精が存在することは「ありえる」が、未来から来たロボットは「ありえない」ということらしい。
 この幼女自身が神様だしそう考えるのも当然か。
「ああもう、めんどくさいわね。じゃ、これでどう?」
 ぼくえあたんは嘆息一つし、自分の頭を両手で掴む。左右のこめかみに手を当てており、一見すれば頭痛を抑えるようだが――。
「ほら、これでどう?(がちゃっ)」
 そう言っててぼくえあたんは一気に自分の頭を首から引き抜いた。

「 G y a a a a a a a a a a a a a a a a a a a a a ! 」

 突然の光景に紫髪の幼女は叫び声を上げ、白目を剥いて泡吹いて気絶した。
 途端に真っ白に輝いていた空間が薄暗くなり、周囲を回転していた七色の虹の輪も回転が止まる。まるで世界の終わりのようだ。
「お、おい! 大丈夫か? も、もしもーし?」
 俺は慌てて気絶した幼女神に駆け寄り、頬を叩く。鋼鉄ボディのぼくえあたんと違い、彼女の体は人間のそれらしく柔らかい。
 ――人間の子供と一緒で大人よりやや体温高めか。
 そんなことを思いつつも必死で呼びかけてみる。
 しかしまあ、メンタルの弱い神様だな、おい。俺もびっくりはしたけど気絶はしなかったぞ。
「ふっ、他愛もない」
「お前はキモイからその生首モードをなおせっ!」
 何故か勝ち誇った顔をするぼくえあたん。よほどこの幼女神が気に入らないらしい。
「はいはい、もどせばいいんでしょ。(がちゃっ)」
 そりゃ、彼女の目的とこの神様の目的は真逆なので対立するのも当然か。
「うっ……はて? 妾は今まで何を?」
 幼女神が気づくと共に再び世界に光が満ち、虹の輪も回転を再開する。
「お、目を覚ましたか? 大丈夫か?」
 俺は彼女の体を抱きかかえながら呼びかける。もしここで彼女がショック死して元の現実世界に戻れなかったらたまったものではない。
「お、おおう? お主か。すまぬな世話をかけて……」
 と、起き上がろうとしたところでぼくえあたんが近づき、笑顔で言う。
「と、安心したところで生首も〜ど(がちゃっ)」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ! あわわわわわっ!!」
「お、落ち着け! しっかりするんだ! あんなの見た目だけだ!
 よーしよーし、いい子だ。なぁ、別に怖くないから。あれは人間でもないし」
「うぅぅ、ぐすっ……だって……あんなリアルな生首とか……ドクタースランプアラレちゃんみたいな漫画ならともかく、リアルでみたら怖いではないか。
 うぅぅぅ……ずずずっ。ホラーは妹の管轄じゃし……」
 マジ泣きしてるよこの神様。駄作の神様でも、ホラーは担当外らしい。ていうか、妹いたのかよ。
「……勝った」
「黙れ偽アラレちゃんめ!」
 しかし、たとえが八十年代だなこの神様。本当に天地開闢から駄作に触れてきたのだろうか。
「ああもう、ほら鼻水出てるぞ。よし、かめ……。
 んで結局あんたは結局なにしに来たんだよ?」
 ティッシュで神様の鼻水を拭きながら俺は訊く。つーか、このティッシュどこに捨てよう?
「う、うむ。せっかくの駄作の才能を崩すようなけしからん気配を感じたのでな。
 妾が直々に正しに来たのだ。駄作は駄作のままであるべきじゃ」
 こほん、と咳をしつつ、赤面しながら言う幼女神。
「いや、そんな駄作て……」
「ちょっと! あんた何勝手なこと言ってるの!」
 俺の反論を遮ったのは意外にもぼくえあたんだった。
「いい? 今の時代では確かに認められないけど……それでも彼の――ワーナビーくんの作品は未来では認められてるのよ!
 彼はただ早すぎたの。表現さえ上手くすればきっと今の時代でだって受け入れられるはず! きっとそうよ!」
 意外な言葉に俺は目を見開く。
 出会ってからこっちずっと、こいつには俺の作品を否定されていた。なのに、急にこんなこと言い出すなんて。
「……ぼくえあたん?」
 俺が呼びかけると彼女はしまった、と言う顔をした後、すぐさま顔を逸らした。
「――ただの一般論よ」
 ぶっきらぼうなぼくえあたんの言葉に俺はどうしていいか分からない。
「やれやれ、で、お主はこの未来から来たというこやつの戯れ言に乗って作品を作るのか?」
 と、幼女神は偉そうに訊いてくる。しかし、その態度とは裏腹に彼女は俺の体を盾にしてぼくえあたんからは身を隠すようにして立つ。
 おいおい、直接蹴られたりした訳でもないのにいじめられっ子みたいな行動になってるぞ。
「…………」
 俺はため息をついた。
「とりあえず、話を聞いてみることにしたよ。それで駄目なら自分の好き勝手な作品を書くって条件でな」
 俺の言葉に幼女神はため息をついた。
「ふうむ。作品を作るのはお主じゃからのう。作者がそう決めたのなら無理に妾が口を出す訳にはいくまいか」
 意外にも彼女は簡単に引き下がる。まあ、彼女は神様なのだし、本来はこうして直接出張ってくるのはイレギュラーなのだろう。
「しかし、未来からの来訪者とは――面白い。妾も貴様の作品がどうなるか楽しみになった。しばらくは観察させて貰おう」
 そう言ってぱちんっ、と幼女神が指を鳴らす。途端、世界は反転し、ぐんにゃりとねじ曲がっていく。
 こちらが声をあげる頃には俺たちは元の、安アパートの六畳の部屋に戻っていた。
「おぉ? なんだか分からんが帰ってこれた……のか?」
「……みたいだね」
 と周りを見回す俺とぼくえあたん。
『さて、ワーナビーとやらよ、いかな作品を作るつもりじゃ?』
 現実空間への帰還に戸惑う俺たちの元へ声が響く。
「ど、どこ? どこにいるのっ! 卑怯者! 姿をあらわしなさい!」
 とぼくえあたんが声を張り上げる。
『おやおや、お主の目は節穴か。妾はここにおる。お主達の目の前じゃ』
 言われてぼくえあたんは正面を見据え――気づく。俺の胸ポケット周辺で五センチくらいの半透明な紫髪の幼女がふよふよと浮いているのを。
「なんで居座る方向に話が進むの? とっとと帰りなさいよ」
 と自分の半分以下の大きさになった幼女を押しのけようとするが、伸ばしたぼくえあたんの手は半透明な幼女神の体をすり抜ける。
『くっくっくっ、次元が違うのじゃよ、次元が。この空間ではお主は霊体である妾に触れることも能わずじゃ』
 いや、別にお前さっきぼくえあたんに殴られてた訳でもないだろ。生首にびっくりして気絶してただけだろうに。
 得体の知れない物でも触れなくなっただけで安心したのだろうか。
「……もうなんでもいいや。ともかく、小説書かないと。締め切りがやばい」
 俺は現状の解決を放棄して机に向かう。ぼくえあたんもしばらく幼女神の霊体を相手に押しのけようとしていたが、幾ら触ってもスカスカッと空を切るので諦めた。
 さて、まずはプロット作りだ。
 学園モノのプロットを考えなければならない。
『学園モノか。学園モノにも色々と種類はあるがのう』
「今ぼんやりと考えてるのは――現代物で、世界各国から優秀な子供達が集められたエリート養成学校を舞台にしようと思っている」
『ほうほう』
「エリートばかり集まるその学校に、ある日何故か主人公は強制的に転校させられ、その学校で成績トップの少年とコンビを組まされることになる。
 で、色んなテストとか対決で他のコンビと戦いつつ、なんでその学校に連れてこられたのか、その他学園の謎とか、追う感じ。
 色んなライバル達との面白対決がウリかなぁ。ライバルはみんなエリートだけどくせ者揃いの少年達が揃ってる」
 ぱっと考えただけのアイデアなので非常にぼんやりとしたものだ。
 これを今からもっと具体的な形にしないといけない。
『ふーむ、それだけだとぱっとしないのう。もっと駄作らしい突き抜けた感じが欲しい』
「駄作言うな。その学園は衛星軌道上にある巨大宇宙ステーションで、空の監獄みたいな物だ。
 実はエリート育成といいつつ、問題児の牢獄でもある。一度入学させられると脱出不可能なもの。
 でも、現代の技術では明らかなオーバーテクノロジー
 何故問題児とエリートがこんな宇宙空間に集められるのか、とか色々とあるんだよ」
 俺の言葉に幼女神はにやりとする。
『お、なんだかクソ漫画臭がしてきたぞい』
「なんでだよ! この設定でどこにクソ漫画臭が!」
『宇宙SFは現代だとすっごい駄作と傑作に二分される両極端なものが多い。
 それでなくても細かい設定に読者がついて行けず、リアリティ路線を進めばどんどん地味な話になるし最終的には好事家御用達になってしまうものよ。
 ゆえに、SFものでメジャー難しいのじゃ。
 無論、妾は大好きじゃが』
 ――くっ、さすが打ち切りの神様。鋭い指摘だ。
 神様の癖にSFに詳しいな。
「……ていうか、そんなにSF詳しいのに未来から来た妖精型ロボットっていうSF的存在は否定するのな」
『いや、ネタはネタじゃよ。そんなやつ現実にいる訳ないじゃろ』
 神様とかいうトンチキ存在なお前が言うなよ。
「いや、ちょっと待って。そんなことよりも、すごく気になったことがあったんだけど」
「え? 何が?」
 それまで黙っていたぼくえあたんが口を開く。どうやら俺の話を聞いて話の内容を分析していたらしい。
「その作品のヒロインは?」
「いや、居ないけど? あえて言えば相棒の少年くらいかな」
 俺の言葉にぼくえあたんはまさか……と、焦る。
「もしかして、女性キャラは?」
「でないな。宇宙空間で女性が生活するには問題が多すぎる。閉鎖空間に性欲盛りの少年少女を閉じ込めるのも危険だしな。
 だから、この宇宙ステーションの学校は少年しかいないし、先生も男だけだ。
 ま、いわゆる男子校だな」
 俺の言葉にぼくえあたんはまたどこからともなくちゃぶ台を取り出し、ひっくり返した。
「なんでやねぇぇぇん!!!」
 ……何故関西弁。
 というか、いちいちちゃぶ台ひっくり返すのやめようぜ。めんどくさい。
「いい! ラノベはヒロインが命よ! そんな男ばっかりの話でアニメ化前提のラノベなんて書ける訳ないでしょっ!」
 そんなこと言っても月経とかある女子が宇宙空間で日常生活をするってかなり難しいんだぞ。
 そら、設定をいじくればなんとかなるだろうけど。
「あー、じゃあ主人公の相棒である成績トップの子は実は女の子で、それを知ってるのは主人公だけ。で、それを隠しながら学園生活をしている、てことで」
『ふむ、王道じゃな。萌え要素としては申し分ない。さらにはそれを隠すというドラマも生まれる』
「確かにそのアイデアは捨てがたいけど、却下よ!!
 いい、売れるラノベを書くならば学園モノであると同時にもう一つの大事な要素があるの!」
 ぼくえあたんの言葉に俺は首を傾げる。
「もう一つの要素……?」
「ずばり……ハーレム物よ」


ラノアニ妖精ぼくえあたん!

第一話「ハーレム物を書こう!」


「ハーレム物か」
 ぼくえあたんの言葉に俺はうぅむと唸る。
 ハーレム物。俗に言う、女の子が一杯出てきて、しかもほぼ全員が主人公を好きになったりする話……のはずだ。
 確かに、売れてる作品にはそういうものが多い。
 だが。
「俺、ああいうハーレム物はあんまり好きじゃないんだよなぁ。
 もちろん、俺の好きな話にもハーレム要素があるもの結構多いけど、それはハーレム要素以外が好きなだけで、そういう恋愛要素は楽しんでないし」
『なにを言う、ハーレムものは設定自爆して分け分からん駄作に走るものが多くて妾は好きじゃぞ』
 黙れよ駄作の神様。
 ていうか、この幼女神の「好き」はあんまりアテにならねぇな。いや、反面教師的にはいいのか?
「打ち切りの神様が好きなら、やめた方がいいんじゃないか?」
「バカね! 打ち切りになるような話でもハーレム物が多いって事は、ハーレム物にはそれだけの価値があるってことでもあるでしょ。
 少しでも作品の価値を上げるためにハーレム要素を入れるという努力があったという話よ。
 きっとそれで打ち切られた作品はハーレム要素がなくなるともっとつまらなくなってたか、余計にコアになってただけよ」
 すごい暴論だなぁ。
「いやぁ、でも未来はどうかしらんが、現代は一夫一妻制が基本だぞ。
 倫理的にハーレム形成はなんか、『識者』とか言われる人達に嫌われるだろうし、第一俺はどっちかというと一途な方だし。
 八方美人なのは好きじゃないな」
 するとぼくえあたんははぁぁぁぁぁ、とわざとらしい大げさなため息をつく。
「分かってないわね。一途な人が多いからこそ、ハーレム物をするのよ」
「????」
 意味が分からない。
「たとえば、ツインテールの女の子だけが好きな人がいたとして、黒髪ショートヘアのヒロインしか出ない作品を読むと思う?」
「まあ、趣味が合わないからあんまり読まないかもな」
「ロリだけが好きな人が熟女しか出ない作品を読む? ツンデレだけが好きな人がデレデレヒロインしかいない作品を読む?
 もちろん、なんでもいけるって人もいるだろうけど、基本的に好みの女性って個々人で十人十色よね。」
「…………」
 そういうことか。
 なんとなく、ぼくえあたんの言わんとすることは分かった。
「つまり! ヒロインとして、ロリも、熟女も、ツインテールも、ショートヘアも、ツンデレも、デレデレもまとめてぶち込めば、それだけでターゲット層が増えるのよ!
 いい? キミは今からSF書くつもりって言ってたけど、そこのバカ神様が言う通り、SFはタダでさえ読者を選ぶの。
 でも、女の子が可愛ければ、それだけでSF嫌いの人も読んでくれるかもしれないっ!
 そして、多種多様なヒロインを用意しておけば、それだけで読者層がぐっと広がるのよ!
 人の趣味は十人十色だけど、複数人ヒロインを用意すればどれか一人くらいは好きな子ができるはずっ!」
 ……なんとも商業主義的な話だ。いや、こいつは商業的に『売れる』作品を作る為に来た訳だし、当然の指摘なのだが。
「と、言われてもそいつ等を出す必然もなぁ」
「いやもう、迷うくらいなら登場人物を主人公以外全員女の子にしちゃえばいいのよ。敵も味方もね。
 で、設定の最後に括弧して『実は主人公が好き』てすればオッケーよ」
 んな無茶苦茶な。
「そんないい加減な」
「これを前提として、それ相応の説明を作れば問題ないでしょ?
 ワーナビー君はむしろ、前提条件を用意してそれに合わせた設定を組み込む方が得意なんでしょ」
 くっ……俺の性格まできっちり分析してやがる。
「んでも、全員主人公好きってのもなぁ。理由もいちいち考えないといけないし、惚れさせないといけないし」
「惚れさせるのは単純よ。登場するヒロイン全員にトラウマやコンプレックスを作って、でそれを解消してあげる。
 それを繰り返すだけでフラグ立ちまくりよ」
 えらくばっさり言うなぁ。
「そんな簡単に恋に落ちるなんてまるで尻軽女ばっかりみたいじゃないか」
「違うのよ。その女の子が一生抱えていかないといけないような重要なトラウマであったり、コンプレックスを解消してあげたら、惚れるかどうかは別としてもその女の子にとっては『大事な人』や『恩人』になるでしょ。
 そうすることで、その女の子の心の中に主人公の居場所ができる訳じゃない。そこまでできればもうけもの。
 後はその女の子にとっての『特別な人』が『恋する相手』に昇格するように練っていくだけ。
 寂しがり屋の女の子には友達を、実力を認められない女の子には正当なる評価を、背伸びしている女の子にはありのままの自分を認めさせる……とか。
 で、トラウマやコンプレックスを設定すればそれだけその女の子のキャラクター造形も深くなるし、人間ドラマも増える。
 そしてそのトラウマ解決をすることによって主人公の成長も促せる。なにもかも一石二鳥よ!」
 言いたいことは分からないでもない。
 大抵のフレーム物は今思い返せばだいたいそんなものが多いような気もする。例外ももちろんあるが。
「だいたいね。女の子に惚れられるって事は、それだけ人間的に素晴らしい、価値のある人間てこと。
 物語の最初はモテてなくてもいいわ。でも、幾つものエピソードを経て主人公は成長するんでしょ。
 あるいは、実力が認められる。
 そうしたら、人間性もよくなるだろうし、そうしたら一人や二人惚れる女の子が出てもおかしくない。
 逆に、女の子に惚れられないような主人公はキャラ作成に失敗してるわ。
 もちろん、意図的に女の子が好きになれないような主人公を主題にして話を作るなら別だけど。
 それに、物語序盤では女の子に見向きもされなかった主人公が後半では、女の子たちに一目置かれてる、てのは人間成長の描写として分かりやすいでしょ」
 …………。
 俺はぼりぼりと後ろ頭を掻き、言葉を探す。
「なんつーか、惚れられてる女の子が多い=男の勲章みたいでやだな。
 あくまで女の子は男を引き立てる道具みたいな考え方で」
「ヒロインどころか登場人物は全員主人公の引き立て役でしょ。
 物語も、登場人物も、すべては主人公の成長や良さを引き立てる舞台装置よ」
 うーん、なんていうか間違ってないんだろうけど、愛がないやり方だな。
「俺は登場人物たちにはその世界で『生きて』いて欲しい。そういうオーダーメイドくさい考え方は好きになれねぇな」
「『売れる』と言うことはそう言うことよ。キミだってメインキャラとモブキャラの役割分担くらいは認めるでしょ」
 そりゃ、町中で通り過ぎる人達全員の設定とかまでは考えない。まあ、RPGのシナリオなら台詞ありキャラクター全員に深い設定を用意するかもしれないけど。
「単純な話、少年誌の表紙を見れば分かるでしょ」
「?」
 突然の飛躍に俺は一瞬ついて行けない。
「少年ジャンプ以外はたいてい女の子のグラビアが表紙じゃない。その方が売れるの。
 その女の子が有名人だろうがそうでなかろうが可愛ければ雑誌はそれだけで売れる。
 だから、漫画となんにも関係ない水着のアイドルが少年誌の表紙を飾ったりする。
 これと同じで可愛い女の子がいればそれだけで読者は増える。
 割り切りなさい。そういうものなのよ」
 なんだろうなぁ、女性読者のこととか全く考えてない男性読者に媚びまくりの思考だな。
「なんつーかそんな前提だから似たような話ばっか量産されてハーレム物が嫌われるんだろ」
 いい加減、そんなものばっか見せられて読者側も呆れてるだろ。
「別に、ヒロインが一人だけでもとても魅力的なキャラクターならそれでもいいんだけどね。
 狼と香辛料みたいに、このヒロインがいればそれでいい! てくらいのカワイイキャラをキミは作れるのかしら」
 それを言われると難しい。
「……でも、あんまり多すぎると物語もバラバラになってしまうだろ」
「まあ、勿論ヒロインは制御できる数に絞るに越したことはないわ。
 王道ならメインヒロインを二人にして三角関係を築くことね。
 他のサブヒロインは随時ちょっかいかける感じで、あくまでメインの三人の恋愛を主軸にするのが分かりやすいわね。
 その代わり、ヒロインは二人だけなんだから凄くカワイイ子をきっちり二人作ること」
 ……まあ、ハーレム物よりは三角関係の方がまだなんか健全に見えるな。
 と言っても三角関係なんてハーレム物以上に使い古された王道だけど。
「……とりあえず、ヒロインが二人以上居て学園ものならいいんだな」
「そういうこと。まずはそれで考えてごらん」
 こいつのキャラクターをあくまで道具って考えるやり口は気にくわないが確かに有用な方法だ。
 とりあえず、俺に代案がないし、先の約束がある以上従うしかないだろう。
 ただ、次に書く作品では絶対に他の方法を編み出してやる。
「……ってそう言えばあの神様どうした? 途中から全然会話に参加してなかったが?」
「そうね。前半あれだけ出張ってた癖に」
 そう思って胸ポケットの辺りを見るとふよふよと浮きながら、涎垂らして寝ていた。
「おい、おい、ウッチー、ウッチーさんー、起きろー!」
『ふぉい? もう話は終わったか?』
 寝ぼけ眼をこすりながら顔を上げる幼女神キーリ・ウッチー。
「お前ホントに何しに来たんだよ?」
『ふっ、妾は神ぞ。妾はあくまでお主等が作った作品を献上され、楽しむ側。作る方法など知ったことではないわ。
 下らん小細工なんかどうでもいいからとっとと作れ。完成品を読まねば何も判断出来ぬわ』
 ああ、あくまでこの神様は読者側なのね。
「そんなこと言っても、プロットがつまらなかったら問題でしょ」
『世の中にはプロットがつまらなくてもやたら面白い作品も沢山ある。
 どんなものでもまずは完成させんとな。いいからとっとと作って妾を楽しませるのじゃ』
 勝手なことを言ってくれる。
「……まあいいか。こいつの言うこともあるし、とっととプロットを固めて本文執筆に入るかっ!」
 幸い今日はバイトもないし、明日は講義も入れてない。
 徹夜でプロットを組んでやるぜ!!
 かくて俺は睡眠時間を削り、プロット作りに精を出した。
 しかし、翌日力尽きた俺の元へ新たなる迷惑な訪問者がやってくることを俺はこの時知らなかったのである。




次回「ツンデレを書こう!」につづくっ!


そんな訳で

 ざっと二話まで書きました。
 うーん、終わり方はもうちょっと考えないといけないですね。
 起承転結として弱い。
 ていうか、前半長すぎ。
 タイトルコールまでどんだけ寄り道してんだよ! と。
 まあヒロイン論はまだまだ広げられるから次回に続くんですけどね。