ちょっと煮詰まってるので

 軽く短編でもここに描こうか、と思う。
 いい加減書き直しを繰り返して同じ話ばっかり考えてるので視野が狭くなってる。
 とはいえ、いつ描くか……今だな。
 てな訳でこっから下に即興で短編小説でも書いておく。
 暇な人は読めばいいんじゃないですかね。





 今度行く学校には変わった人がいるらしい。
 なんでも、異界からの交換留学生だとか。
 僕は田舎育ちなのでよく知らないけれど、異界というのは最近見つかったけれども、よく知られた世界らしい。説明を聞いてもちんぷんかんぷんで、インターネットで調べても訳の分からない宗教戦争が勃発してて、ウィキペディアですら何度も改竄合戦が行われ、ネット辞書の内容もてんでバラバラ。どこもかしこも「異界」についてはっきりと述べてない。すべてに共通するのは「よく分かってない」と言うことだけだ。
 まあ、大したことはないだろう。
 そうタカをくくって僕は入学先の高校の門へ足を踏み入れた――と言うのは勘違いだった。

ヒヒィィィィィィィン

 馬の嘶きが聞こえたかと思うと僕の身体は宙を舞っていたからだ。
「ボグハァ」
 数秒の滞空時間を経て人生で出したこともない悲鳴を上げて僕は見事不時着に成功した。
「これこれは水川嬢……今日もまたお美しい」
「やだ、アッシュくんてば相変わらずお上手なんだから」
 遠くの方でどこかの色男が女を口説く声が聞こえてくる。
 ――まさか、僕は軟派男が乗った馬にはねられたのか!
 そう思った途端に怒りと共に僕は跳ね起きた。
「やい! てめぇ! ……て、馬?!」
 はじめに目に入ったのは見たこともない美しい白い馬だった。それまでの怒りを忘れて思わず息を飲む。純白の馬――風にそよぐたてがみは動物をそれほど好きでない僕ですら見とれてしまう。
 そんな白馬の姿の中でもひときわ輝くのは、その額にある角だった。その身体と同じく純白の角はキラキラと陽の光と共に輝き、光の粒子を振りまいてる。
「え? あれ?」
 ――角?
「なんだ、下級生? 私に何か用か?」
 角の生えた馬は鼻息を荒げながら僕を見下ろした。
 ――あれ? この馬、今喋らなかったか?
 その側には可愛い女子高生が立っている。というか、僕を見下ろしつつ、女子高生の顔にすりすりと自分の顔をすりつけていた。
 ――え? あれ? これどういう状況?
 理解が追いつかずに頭が真っ白になる。
 と思っていたらどたどたとそこかしこから現れた男達に取り囲まれた。
「なんだてめぇ! いつまでユニコーン先輩を見てだよ!」
「やんのかこらあ!」
 ――え? ユニコーン
 目をぱちくりし、改めて先ほどの角の生えた馬を見た。馬の周囲はキラキラと、特に角の周囲に光の粒子が飛び交い、幻想的な雰囲気を醸し出している。
 その姿はまさしく神話に出てくる神獣ユニコーンそのものだった。
「え? なに? 映画かドラマの撮影?」
 僕を取り囲んだ柄の悪い連中は全員肩に白い角の生えた肩パッドを装備していた。全員が眼鏡をかけており、どことなくオタっぽい雰囲気がある。
「馬鹿野郎! この学校にいるのに、先輩のことシラねぇのか!」
 かーぺっ、と唾を吐き捨てる取り巻き。
「この方こそは異界からの交換留学生、神獣ユニコーンのアッシュ先輩だろうがぁぁぁぁ!」


『それいけ!ユニコーン先輩』

「ふ、そこまでにしたまえ。そこな下種は新入生だろう。無知を責めても仕方あるまい」
 ふっさぁ、とたてがみを揺らしながら目をキラキラと光らせるユニコーン先輩。
 ちなみにさっきユニコーン先輩が顔をすりつけていた女子は「後で教室でね」とこの場を去っていった。
「さっすが先輩! 度量が広いぜ!」
「ぱねぇ!」
 周囲にいるオタク集団達が口々にユニコーン先輩を褒め称える。
 このよく分からないノリについて行けず、僕はただ呆然とした。
「あれ、ケンヤくんどうしたの?」
 かけられた言葉に俺は慌てて我を取り戻した。
 振り向くとそこにいたのは幼なじみの園川良子だった。
 それほど美人と言う訳ではないが、長い黒髪がかわいい、清楚な子だ。
「りょ、良子じゃないか。お、おはよう」
「もう、朝からボロボロじゃない。どうしたの?」
「べ、別にどうってことねーよ」
 幼なじみに心配され、思わず俺は視線を逸らしてぶっきらぼうな反応をしてしまう。朝からこんな女の子に心配されるなんて照れくさい。顔が思わず赤くなってしまう。
「どうってことないでしょ? 何があったの?」
「いや、その……あそこの馬が」
 と、先ほどのユニコーンを指さす。
 良子もそちらを見て驚いた。
「うわ、なんて綺麗な馬! すごーい!」
 動物好きな良子は目を輝かせてユニコーンに駆け寄った。ユニコーンは何故か青い顔をして後ろに下がろうとしたが、取り巻きに囲まれていたせいか、身動きが取れず、あっさり良子に顔をなでられた。
「うわー、なんでこんな街中に馬が居るんだろ」
 と、ニコニコとする良子。
 が、ユニコーンはそれどころじゃなかった。
「ゲフッ!!!」
 良子の顔面に血を吐き、大きくぶっ倒れた。
「ぎゃぁぁぁ、しっかりしてください! ユニコーン先輩ぃぃぃぃぃぃぃ!」
「ええい、ビッチが離れろ!!!」「気を確かに!」「傷はきっと浅いですぞぉぉぉぉ!」
 周りのオタク連中が慌てて良子を引きはがして介抱を始める。
「誰か!! 誰かこの中に処女の方はいませんかーーーー!!!」
 オタク達が悲痛な叫び声をあげ、意味不明なことを言い出す。
「ちょ、あんた達何言ってるのよ! 女子に失礼だと思わないの?」
「バッカ野郎! ビッチどもは黙ってろや! ユニコーン先輩を知らんのか!
 清らかな処女しか触ったらダメなんだぞ!!
 非処女が触ったら障気にやられて内蔵が機能不全起こすんだぞ!」
「最悪の場合……死に至る……キリッ」
 ――何言ってんのこいつ?
「く……異界から処女を求めてこの世界にやってきたというのに……早くもここで我が寿命が尽きることになるとは……」
「し、しっかりしてください!!! あなたが死んだから全日本処女愛好会はどうなるんですか!! 俺達は誰の教えを元に生きていけばいいんですか!!」
 オタク達は何故かよく分からないけれど、泣きながら今にも死にそうなユニコーンと今生の別れのようなことを開始した。
 ――ナニコレ?
 そう言えばゲームでそういう馬がいた気がする。ユニコーン。角の生えた馬で、悪魔を合成する材料になるんだっけ? よく知らないけど。
 ちなみに、オタク達は白い角の生えた肩パットを制服の上から着用していたが、よくよく見ると「全日本処女愛好会」というタスキを全員していた。
 彼らの言(ゲン)を信じれば、ユニコーンは処女以外が触ったら死ぬ特性があるらしい。
「そんな馬鹿な……だって良子が非処女な訳が――」
 小さな頃から隣の家に住んでいた良子のコトは誰よりも知っているつもりだ。
 そんな良子がまさか処女じゃないなんて――。
「…………」
「あれ? 良子? なんで顔逸らしてんの?」
「お、女の子には色々あるのよ。あはっ、あはっ……あははははは!」
 良子はごまかし笑いを浮かべながら後ずさりしつつ、この場を走り去った。
「え? えぇぇぇぇぇえ! 嘘だろう!!!! 良子がぁぁぁぁぁぁぁ!」
 ――どこの誰だよ!!! そんな、俺より先に!!! 小さい時は良子と結婚すると……いや、今でもちょっと、ほんのちょっぴり考えてたりしたこともなかったりしなくもないのに……。
「おい、そこうるせーぞ!! こっちはユニコーン先輩が死にかけてんだぞ!!」
「うるせいオタクどもが!!! こっちはなんか失恋のような違うようなよく分からん状況で泣きたいんだ!! 何がユニコーンだ!! 死ねよ!!!」
 良子が非処女だと言う衝撃の事実に思わず口汚くののしってしまう。
「なんだと!!?」「貴様ぁ!! 口を慎め!!」「本当に死にそうなんだぞ!!」
 オタク達と僕の間で睨み合いが始まる。
 が、それを止めたのは意外にも死にかけのユニコーン先輩だった。
「ゲッホゲッホ……よせ……お前達」
『先輩!!!』
 息も絶え絶えのユニコーン先輩がなんとか口を開く。
「吉田、そこの新入生は童貞だ。お前達の仲間なのだから仲良くしてやってやれ」
 ユニコーン先輩の発言に思わず顔が真っ赤になる。
「ちょ……ちげーし!! 俺童貞じゃねぇぇし!!!」
 慌てて否定するも、何故か周りを取り囲むオタク達の目は実に生暖かいモノに変わっていた。まるで、幼い子供を、あるいは異国の地で同胞を見つけた旅行者のような、実に親愛に満ちた目だった。
「そうか……キミもまた俺達の仲間だったか」
「一緒にすんなぁぁぁあ!」
 ――畜生なんなんだよ、神獣ユニコーンて! 意味わからねぇ能力持ちやがって!!!
 ていうか、なんでそんなものがこの世界にいるんだよ! ゲームの中じゃネーのに!!
「お、佐間じゃん。校門の前でなにやってんの?」
 振り向くと茶髪で露出の高い改造ブレザーを着た野々下由姫がいた。中学の同級生で、三年生の夏までは地味だったのに、何故か二学期になってから髪を染めて派手な格好になった、典型的な夏デビュー女子だ。男とよく「遊んでる」と噂の子である。
 ――あ、これ駄目なパターンだ。
 野々下を見た瞬間、俺はなんとなく事態の結末を予想出来た。
「てぇい! ビッチめ!! 離れろ!!」
「え? 何いきなり? これどういう状況?」
 4月で春なのにヘソ出しルックの野々下は状況の変化についていけず、眉をひそめる。
 が――そこで突如として今まで死にかけていたユニコーン先輩が立ち上がった。
「……こ、これは濃密な処女の臭いっ!」
「なん……」「だと……」
 ユニコーン先輩の発言にオタク達がどよめく。
 が、ユニコーン先輩はそんな取り巻きの反応を尻目にオタク達を押しのけ、野々下に詰め寄った。
「え、ちょ、なんで学校に馬がいるの?」
 間近で人間の三倍近い巨大な馬に顔を近づけられ野々下は恐れおののく。見た目はヤンキーっぽいけれど、馬に近づかれて怯える野々下はちょっと可愛いと思ってしまった。
 全員が緊張する中、ユニコーン先輩は……舐めた。
「キャッ」
 ペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロ
 野々下の顔を、髪を制服を手を足を……全身をなめ回していく。必然、野々下の制服はユニコーン先輩の唾液でベトベトになっていった。
「……………………えー?」
 その間野々下は泣きながら「助けて!」と悲鳴をあげていた。
 だが、どういうことか。
 見ている間に今にも折れそうなほどしなしなになっていたユニコーン先輩の爪は鋭くそそり立ち、黄ばみ始めていたユニコーン先輩の体毛も再び真っ白に輝き、キラキラと光の粒子を放ち始めた。
「処女分摂取完了!!! アッシュ完全復活!!」
 きらきらと光り輝くユニコーンにオタク達はばんざぁぁい! と歓声をあげた。
 その横で野々下はしゃがみ込み、泣きじゃくる。完全にレイプされた後状態である。
 ――なんてこった、男で『遊んでる』と言われてた野々下が処女だったなんて。
 そう思うと急に野々下が可愛く思えてきた。
 逆に、そんな野々下を酷い目に遭わせたユニコーンへの怒りが湧いてくる。
「ふっ……お嬢さん。どうしたんだい? お嬢さんには涙は似合わないですよ」
 と、何故かイケメン面しているユニコーンが野々下に話しかけた。その姿はまさに紳士そのもの――。
「って、お前のせいだろうがぁぁぁぁぁっ!」
 僕は思わずユニコーン先輩を殴っていた。
「ぁぁぁー! ユニコーン先輩!!!」





 なんにしても、これが異界から来たユニコーン――アシュトバーンと僕との出会いだった。

つづ……かない?




 我ながらこれは酷い。
 深夜に思いつきで描くもんじゃないなぁ。
 そして、文章に直すとダメだなぁ。
 思いついた時は四コマで描くとおもしろそうだなぁ、だったけど、文章で書くとやたらねちっこくて、あまり上手くできませんでした。
 むー、もっといろいろなネタが浮かんでたんだけど、上手く消化出来ず。
 オチも弱い。

 異界の設定も語られないまま終わってしまった。
 ユニコーンに限らず幻獣と人間による学園モノでもちょっと描きたいなぁと軽く思ってた時に思いついた一品でした。
 よかったら感想お願いします。
 ではでは