無理でしたー!

 残念。一日で二話分用意出来ず。
 仕方ない、今月のBOX-AIRは諦めるか。
 これは来月分に回そう。

ちなみに今書いてる話はこんな感じだよん。




 その日も俺は自室で小説を書いていた。
 この俺、ワーナビー・パナマウント・フォックス20世(ペンネーム)は希望に満ちあふれたラノベ小説家志望の大学生である。
 今日も今日とて世界を揺るがす新作が今まさに出来上がろうと――。
バチッ
 ん? パソコンのなんか様子が――。
バチバチ
 あれ、気のせいか今中空を電流が走ってたような――。
バチバチ――ドカァァァン
 爆音と共に煙が舞い上がり、狭い六畳間はあっという間に煙りまみれになってしまった。
「なっ! なんだぁぁっ!」
 俺は椅子から転げ落ちた後、手探りで壁を探し、なんとか窓を開けることに成功する。
「けっほけっほ、一体何が起きたって言うんだよ」
 俺は無駄と思いつつも手で煙を窓の外へ追い払う。
 やがて、しばらくすると煙も落ち着き、灰色の埃が沈殿した床が目に浮かぶ。
「おいおい、なんだよこれ。こんな爆発聞いたこともねぇ。ぜってーメーカーに訴えてやる」
 海外製の安いパソコンと言ってもこんなことが許されるはずがない。
 ん? 待てよ、パソコンが爆発したと言うことは――。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁ、俺の新作小説のデータがぁぁぁぁぁっ!」
 叫びながら俺はあるはずもないパソコンの筐体を探して机に向かい――。
「…………?!」
 そこで信じられないモノを見た。
 目をごしごしとこすり、目の前の光景を確認する。
 灰色のチリや埃にまみれた部屋の中、爆心地であるパソコンのあった場所だけは切り取られたように埃が沈殿していない。
 だが何より驚いたのは、その爆心地にパソコンがなく、代わりに赤髪のポニーテールをした可愛い美少女がいたことだった。大きさは十六センチくらいだろうか。その背中にはGペンの様な形をした円錐状の翼が四つX字状に展開しており、まるで妖精のようである。
 その赤髪の妖精は俺と目が合うとにこりと笑ってこう言った。
「やぁ! 初めまして! ボクは未来の世界からやってきたラノアニ妖精ぼくえあたん! よろしくね!」
 これが……俺とこの奇妙な妖精の出会いであった。


ラノアニ妖精ぼくえあたん!

第ゼロ話「ぼくえあたん登場!」

「ラノアニ妖精……?」
 俺の呟きに妖精――ぼくえあたんはにこりと笑う。
「そう! ラノベアニメの妖精だよ! 君たちみたいな小説家志望の青年のところに現れ、小説作りの手伝いをするのが役目なんだ!
 いいラノベがあれば、それがアニメの原作になる! アニメが売れれば原作ラノベも売れる! スポンサーもうはうは!
 このWIN−WINの関係を作り出すのがボクのオシゴトだよ!」
 ぱちん、とウインク一つ投げかけながら彼女は笑う。おいおい妖精なのにちょっと狡い上に現実的だな。
「いやいや、そんなこと言われても。ていうか、さっき妖精なのに未来からやってきたとか言ってなかったか?」
「うん、ボクは電子の妖精だからね。未来の技術で作られた人工生命体だよ! 未来じゃボクみたいな存在は当たり前なのさ!」
 なんてこった、未来はこんな可愛い人工生命体が大量生産されているのか。未来やべぇ! 作ったのは日本の科学者に違いねぇ。相変わらず日本の技術は変態だな!
 正直本当かどうか信じるのは疑わしいと所もあるが、俺も小説家志望の端くれ。
 その方が面白いと信じたモノを信じる!! 後悔するのは後回しだ!
 精神科病院に通うのは嫌だからなっ!
「……ってそんな電子の妖精がなんでまた俺のところに? 時間旅行なんてして、タイムパラドックスが起きたらまずいんじゃないのか?」
 俺の問いにぼくえあたんは初めて笑顔を曇らせる。
 しばらく考えた後、彼女はぽつりぽつりと口を開く。
「落ち着いて聞いて欲しいのだけれど……」
「なんだよ今更。さっきから非現実的なことが起きまくってるから今更驚かないぜ」
「実は……キミは将来ラノベ作家になるんだけど――」
「え? マジで! やった! 俺の夢は叶うんだっ!」
 話の途中でガッツポーズを取る俺に対し、彼女は両手をばたばたと振って止める。
「ちょっとちょっと! 話を最後まで聞いてよ!」
「で、どうなんだ? 俺の作品は売れるのか?」
 テンションのあがった俺に対し、ぼくえあたんは顔を引きつらせながら言う。
「いや、その……まったく売れず、幾つかの作品を遺した後、失意のまま若くして自殺してしまうのよ」
 衝撃の発言に俺は目の前が真っ白になる。
 え、ちょ、なんで? マジで? せっかくデビューしたのになんだよそれは?
「お、落ち着いて聞いて。でも、キミの作品にインスピレーションを受けた子供達が将来次々と作品を発表し、それらの作品は大ブレイクするの。
 で、その成功者達が、口を揃えて『子供の頃読んだワーナビー先生の作品のおかげだ』と言って、後に再評価しちゃうわけ。
 結局、キミの死後二百年後には早すぎた天才としてキミの名前は歴史教科書に残るわ」
 あまりの展開に俺は目を白黒させる。
 すげえ! 俺は文壇に名を残す天才小説家になるのか。まあ確かに名作を書く小説家って生きてる間はなかなか評価されないもんな。
 ふっ、俺はどうやら生まれる時代を間違ってしまったようだな。
「……いいなそれ。太宰治みたいで格好いいな。うっしゃぁ! 失意のあまりに自殺するまでがんばって小説書くぞおおおっ!」
「――ワーナビーくんてば凄いポジティブなのね」
 よく分からないくらいテンションあがってる俺に対し、ぼくえあたんはすごく醒めた目で言ってくる。
「え? 生きてる間に評価されなくても、後に俺の作品が評価されるなら別にいいじゃん」
 すると、彼女はたんっ、と机を蹴って跳び上がるとそのまま俺の頬に強烈な回し蹴りをお見舞いした。
 意外に硬い彼女の脚に蹴り飛ばされ、俺は床に倒れて悶絶する。体中に灰色の埃がつきまくりだ。
「ぐはぁぁっ! いてぇっ! なにすんだよ!!!」
 彼女は机の上に着地し、腰に手を当ててびしり、と俺を指さしてくる。
「言っとくけどね! そのあんたの作品のせいで未来はメチャクチャになるのよ!!」
「え?」
 突然の糾弾に俺は思考がついていけない。
「あんたのマニアックな性癖がメジャーになるせいで未来世界の風紀は乱れまくり!
 おまけに思想的にも訳分かんない支離滅裂な哲学がもてはやされて未来は――色々と大変なんだからねっ!」
「んなアホな。だいたいそんな作品なら出版規制かかるんじゃ」
「ところが、あんたの作品自体にはそんな変な表現はないのよ。
 でも、何故か波長が合う人が読むととんでもないインスピレーションが浮かんで狂っちゃうの!」
 マジかよ。無茶苦茶過ぎる。
 あれだろうか。たとえば、髪の毛を撫でるシーンを見て、別にエロイ表現でもなんでもないのに、やたら性的な匂いを感じてしまうようなあれだろうか。俺はよくそんなことを感じるのだが――。
 いやいや、でもおかしくね? 俺の作品にそんな魔力あったの? 訳わからねぇ! どっちかというと波長が合ってるやつらがおかしいんじゃないか?
「それにね、未来で再評価されるということは、あなたの残したブログの日記や友人に送ったメール、ツイッターの発言とかが何万人もの学者の間で回し読みされて『ワーナビー先生の性癖はやはりこの時期にこじらせた童貞力によるものが強く、特にこの××年のクリスマスイブの日記によると』」
「ぎゃぁぁぁやめて! 朗読しないでっ!」
 あの日の出来事はトラウマなんだ! 勘弁してくれ!
「ふふふ、こんな感じであんたの私生活は未来人達に丸裸になっちゃうの! それでもいいの?」
 くっ……なんてこった。歴史上に名を残すってのは大変だな。そういや石川啄木とか夏目漱石とか明治の文人達も平気で日記や家族への手紙が研究資料として博物館で展示されたり教科書で引用されたりするもんな。
 怖い! 未来マジ怖い!!
 とりあえず、ブログの日記は全消去確定だ。ネット上に日記を残すなんて危険すぎるぜ!!
「じゃ、じゃあ……結局、お前は何しに来たんだよ? お前は俺に何をする気なんだ!?」
 ガクガク震える俺に彼女はにこりと笑ってこう言った。
「――ボクはそんなキミに、革新的な話ではなく、どこでもある、ごく普通の、よくあるラノベを書かせて、ふつーの小説家にするために未来からやってきたのさ!」
 ポニーテールを揺らしながらなんだかあざとく可愛い決めポーズを決めてくるぼくえあたん。
 胸をぎゅっとしててこの子意外と胸があるな、と俺は再認識した。
 ……ってそうじゃなくて。
「いや、それってメチャクチャ時間干渉じゃねぇか。下手したら人類の進化を逆行させるんじゃないのか?」
「そんなこと言っても、未来政府の決定だし」
 と、彼女は胸を張る。
「政府のっ!? そこまで俺の作品は影響力があるのかよっ!?」
「悪影響だけどね。
 いい? ラノベなんてそんなに深く人々の心に残っちゃ駄目なのよ。
 ぱっと読み捨てて、ちょろっと読んで軽く感動して、次の日には内容の大半を忘れてしまうような……それくらいのライトな感じでちょうどいいのよ」
 あまりの暴論に俺はぶちんっと来る。
「おいこらっ! なんだその無茶苦茶な話は! ラノベ作家さん達だって読んでる人達を感動させる為に一生懸命書いてるに決まってるだろ!
 好き勝手なことを抜かしやがって!
 未来でも表現規制をするヤツらの考えなんて最悪だな! 俺はそんな未来の邪悪な言論統制には屈しない!
 サブカルチャーと言われようがなんだろうが、俺たちはいつも必死で、魂を込めて作品を創作してきたんだっ!!
 読み捨てでいいとかそんな意見は認めねぇっ!」
 俺の言葉にぼくえあたんは肩をすくめる。
「でもこのままだと生きてる間は作品を認められず、失意のまま自殺することになるけどそれでいいの?」
「……うっ」
 改めて言われるとそれはヤだな。でも、俺にはクリエイターとしての魂があって……。
 ああでも、最近は親からの仕送りも滞ってきてきついんだよなぁ。
 なんか俺の親父の会社そろそろつぶれそうとかいう噂もネットであるし。
 しかも母さんからも大学は学費払えなくて卒業させてあげられなくなるかも、とかこっそり相談されたし。
 ……お、俺はいい。
 けど、ここで俺が意地を張った結果もしかしたら、俺だけでなく家族のみんなも悲惨な結末を迎えるかもしれない。
 高校生の妹も大学進学をやめて働くことを考えてる、て昨日メールしてきたし。
「ねぇ? どうするの? ボクの言うことを聞けば、歴史には残らなくても、平々凡々なラノベ作家としてまあまあな人生を送れるかもしれないんだよ」
 ラノベ作家なのに安定した生活! そんなのあるはずがねぇ。それはよっぽど売れてる一握りの作家だけだろう。
 だが、この未来からきた妖精の話を聞けば……もしかしたら。もしかしたら……いや、でも……。
「お、お前達未来の表現規制者には屈しない!!
 ……が。
 創作論として、一応お前達の意見も聞いてやっても……いいぜ?」
 絞り出した俺の言葉にぼくえあたんはにやにやと笑いながら応じる。
「はいはい、ツンデレお疲れ様ー」
ツンデレじゃねぇよ!」
 反論する俺だが、ぼくえあたんは聞く耳を持たない。
「ま、そんな訳でアニメ化できるようなよくある売れてるラノベ目指してがんばろー!」
 おーっ、と右手をあげて可愛く気合いの声を挙げるぼくえあたん。
「お、俺はあくまで参考意見を聞くだけだからなっ!」
 こうして、俺とぼくえあたんの奇妙な創作生活が始まったのである。

つづく!


 こんな感じでゆるーい、頭の悪い小説書く予定(笑)

・第零話 ぼくえあたん登場!
・第一話 学園ものを書こう!
・第二話 ハーレムものを書こう!
・第三話 ツンデレを描こう!
・第四話 日常ものを書こう!
・第五話 バトルものを書こう!
・第六話 エンディングを書こう!

 たぶんこんな感じ。
 メタギャグものです。