即興短編小説

 先日の日記で書いたとおり、軽く練習として短編を書いて見る。
 気に入ったら……まあ感想は書かないにしても、タイトル横の「はてなスター」でもクリックしてくれたら嬉しいかな?
 後、お題のリクエスト募集します。
 三題噺でもなんでもいいので。



「どういうことなの!?」
 突然の言葉に僕はきょとんとする。
 放課後の教室。
 クラスメイトの豊浦志乃先輩に呼ばれ、扉を開けてみたらこの台詞である。
 クラスメイトなのに先輩と呼んでいることから分かるとおり、あまり頭はよくない。
「……いきなりそんなことを言われても分かりません」
 僕の至極当然の意見に先輩は全く耳を貸さない。
「なによそれ。あんた成績がいいんでしょ? だったら私が質問する前にもう答えを用意しておきなさいよ!」
「それは成績がいいを通り越して神様みたいな話ですね」
 ため息をつき、僕は周囲へさりげなく視線を巡らせる。
 教室には誰もいない。
 当然だ。この時期はテスト期間中なので授業も早く終わる。夕暮れまで高校の教室に残ってる人間なんてほとんどいないはずだ。
 ――先輩みたいに補習を受けさせられてる人を除けば、だけど。
「僕は、先生に先輩の勉強を面倒見るように言われてますけど――『何が分からないのか』を教えられないと分かりませんよ。
 何が分からないんです?」
 すると先輩は目をつり上げ、声を張りあげる。
「決まってるでしょ! どうも最近気分が落ち着かないのよ!」
「? なら、保健室にでも行ったらどうです?」
「行ったら鼻で笑われたわ。で、あんたに聞いた方がいいってね」
 僕は目を瞬かせる。
 僕の知る限り、保健室の先生はとても優しい女性でいつも微笑みを絶やさない人だ。男子生徒からも人気が高い。天使のような人だと言われている。
 そんな人が仮にも自分を頼ってきた生徒を鼻で笑うなんて考えられない。
 相変わらず先輩の言うことは意味が分からない。あるいは、それほど失礼な質問を先輩はしたのだろうか。
「伺いましょう。どんな質問をしたんです?」
「最近、あんたと一緒にいるとこう、なんかムカムカして、落ち着かなくて、イライラして、下手したらあんたが居ない時もあんたのことが無性に気になってやけにイライラして仕方ないのよ!!!」
「…………」
 僕は三度、目をぱちくりとさせた。
 ――これは鼻で笑われても仕方ないのかも知れない。
 石動先生も意地の悪いことをする。
「……それってアレじゃないですか? 僕に恋してるんじゃないですか?」
 僕の発言に先輩はこれでもかと言わんばかりに目を見開く。
「はぁ? 何言ってるのよ? あんたみたいなちんちくりんのこと私が好きになる訳ないでしょ?」
 先輩はこれでもかと言わんばかりに冷たい視線で僕を見つめてきた。
 うぅ……傷つくなぁ。
「いや、だってそうでしょ? 一緒にてなんだか落ち着かないんですよね?
 居ない時も僕のことを気になってるんですよね?」
 思わず僕はニッコリする。
「じゃ、きっと僕のことが好きになって気になって仕方ないんですよ?」
 僕の言葉に先輩は眉をつり上げた。
「うわ、なんかすんごく上から目線!! むかつく!
 そんな訳ないでしょ! 私、あんたのことは全然っタイプじゃないんだからっ!」
 僕はにやにやと笑いながら言葉を続ける。
「いやいや、きっと先輩が自分で自分のことを気付いてないだけですって」
「……なんであんたそんなに自信満々なのよ」
 先輩の質問に僕は思わず胸を張る。
「ふふふ……僕はですね。めんくいなんですよ。
 先輩は性格は最悪ですが……見た目だけは美少女ですからね。
 今日という日のために、先輩のような人格破綻者に手取り足取り勉強を教えたり、パシリもしたりしてたんですよ!
 すべては先輩に近づく下心のため!!
 あれだけ四六時中僕がつきまとってあげたんです! そろそろ僕に惚れてしまってもいいはずですっ!」
 僕の渾身の演説に――しかし、先輩は何故か汚いものでも見るかのような冷めた視線を投げかけてきた。
「……あんた……成績いいけど馬鹿でしょ?」
「えぇ? 先輩に言われるなんて心外です! それが惚れてる男に対する態度ですか!」
 何故か先輩の視線の温度はまた一段と下がった気がした。
「おかしい……分かった。あれですね! 告白だ! 告白イベントがないからだ!」
 僕の芸術的な思いつきに先輩はますます顔を歪めた。
「先輩。好きです。先生に先輩の面倒任される前から狙ってました! 付き合って下さい!」
「そんな告白で付き合う奴がいるかボケがぁぁぁぁぁぁあ!」
ひでぶぁぁぁぁぁぁ」
 僕の体は中空を舞い、廊下の壁に激突した。
「ぜーはーぜーはー……相変わらずイライラするやつ」
 僕はしたたかに打った背中を押さえつつ、どうしたものかと悩む。
 先輩はどうやらあまりにも馬鹿すぎて自分の恋心に気付いてないらしい。
 それを自覚させるにはどうすればいいのか。
「あらー……告白失敗したのねー」
 声の方角へ振り向くとそこには先輩の親友である広島葉希先輩がいた。名字が広島の割に阪神ファンである。先輩と呼んでいることから分かるとおり、二学年上の先輩だ。
 いつもイライラしてる豊浦先輩と違い、彼女はいつものほほんとしている。豊穣の女神のような人だ。側にいるだけで植物の成長が促進されそうな母性がある。きっと僕が昨日からこっそりと部屋で育て始めたプチトマトも先輩の側におけば一日で果実を実らせることだろう。
「ヨーキ先輩! どうしてここに!?」
「いや、なんかものすごい物音したから」
 それもそうか。
「って、告白の部分聞いてるじゃないですか! 明らかに物音する前からいたでしょ!」
「……ちっ」
「あれ? のほほんキャラなのに舌打ちするの止めて下さいよ! イメージ悪いじゃないですか!」
 もしかして、保健室の先生は男子の前でいい顔してるだけで、女生徒の前では相手の相談を鼻で笑う酷い人で、ヨーキ先輩も実は豊穣の女神というよりただの性格の悪い女なのだろうか。
 酷い。もう女の人なんて信じられない。
「立ち聞きするなんて人が悪いぞ、ヨーキ」
「だってー、豊浦ちゃんにあんな相談されたら気になってつい来てしまうでしょ」
 ……ああ、先輩にあんな内容相談されたらこっそりついてきても仕方ない。少なくとも、僕が「あいつのことが気になって仕方ないんだけど、これどういうことだと思う? え? 本人に聞けって? 分かったちょっくら本人に聞いてくる」と言われたら絶対に尾行する自信がある。
「でも、豊浦ちゃんがキミを振ったのなら、私が彼女に立候補しちゃおうかなー」
「え? マジすかっ!?」
 がばっと起き上がり、ヨーキ先輩の顔を見る。
 おっとりした性格通りの特徴に欠ける、ブスでもなければ美人でもない平凡な顔だ。面食いの僕からすれば守備範囲外と言わざるをえない。
 だがしかし、おっぱいだけはでかかった。
「ね、私の彼氏にならない?」
「はいっ! よろしくお願いします!」
 俺はさしのべられたヨーキ先輩の手を即座に握り返した。
 こうして、ついに僕の彼女居ない歴=年齢の幕は下ろされたのである!
「ちょっと待てぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえ!」
 見つめ合う僕とヨーキ先輩の間を豊浦先輩が割り込む。
「なんですか、先輩? 僕にせっかく彼女が出来たのに」
 目を怒らせた豊浦先輩が「うっさい」と僕の頭をデコピンする。
「あんた、私のことが好きだったんじゃないの?」
「えぇぇーでも振られたしー」
「うわー、憎たらしい顔……。
 もしかして……女だったら誰でもよかったの?」
 豊浦先輩の言葉に僕はふっと笑みを浮かべる。
「はい、ぶっちゃけその通りです!」
 殴られた。
 先輩、渾身の右ストレートである。
「腰の入ったいいパンチです……僕が教えることはもうありません……がくっ」
「自分でガクっ、て言うとかずいぶんと余裕ね」
 豊浦先輩は呆れた顔をしつつ、ため息をついた。
「でも一つ分かった」
「なんです?」
「このムネのムカムカは……ただ単にあんたがむかつく奴だっただけよね」
「ですよねー」
 うん、知ってた。






 哲学さん、初音ミクの曲で「どういうことなの!?」て曲が好きで、恋した女の子が自分の気持ちに戸惑う様がとてもかわいく描かれてていいなぁ、と思いつつ、そんなこととはまったく関係のない話を書いてしまいました。
 まさかの主人公変態オチ。
 ていうか書いてたらよく分からないくらいに筆がすらすらとすべりまくって、一時間くらい経って「やっべ、このまま行ったらえんえん書き続けることになる」と思って慌てて終わらせました。
 短編書くの楽しい。
 こういう、アドリブでどーでもいいくだらない話を書くのはまだまだいけるな、とか思いました。 
 ちなみに書き始める時は女の子にいきなり「どういうことなの?」て質問されることだけを決めて後は全部アドリブです。馬鹿くせー。
 よかったら感想下さい。