即興小説その9

 毎日短編書いて小説力をあげようキャンペーンその9。

(http://d.hatena.ne.jp/kaien+B/20130815/p1)

○今回のプロット

・気になる女の子がいる
・告白する



 俺の後輩はちょろい。
 普段はすまし顔でお人形さんみたいな大人しい子なのだけれど――色恋沙汰の耐性がない。
 なのでちょっかいかけると面白い。



「なあ、森中」
「なんですか先輩?」
「キミの瞳に……乾杯」
「ばっ、馬鹿なこと言わないでください!」
 冗談で言ったのに彼女は顔を真っ赤にして顔を背ける。
 おいおい、そんなベッタベタな台詞で赤面できるとかある意味才能だろう、と思う。



「森中ってさ。可愛いよなー」
 なんて言えば――。
「んもう、お世辞はよしてください」
 ぷいっと真っ赤な顔を逸らされる。
 が、そのまま黙ってみていると耐えきれなくなって向こうから話を振ってくる。
「……例えば、どこがでしょう?」
「初めて会った時にあげたハンカチを今でも大切に持ってくれてること」
「どっ、どこでそれをっ!? まさか、よしこがっ!?」
「え? 本当に持ってるの?」
 適当に言っただけなのに。
「んもう! 知りません!」
「悪かった。でも、俺がお前を可愛いと思ってるのは本当だぜ?」
 わざと冗談めかして言う。
 が、この子は冗談が利かない。
 消え入りそうな声でありがとうございます、と言い、空気に耐えきれなくなって走って逃げ出してしまう。




 ぶっちゃけていうと、俺は彼女のことをそれほど気にしてなかった。
 確かに見た目は可愛いけど、あまりにもちょろいのでからかい相手として見てきた面が大きい。
 何度も何度も彼女に「へい、俺と付き合わない?」みたいなことを冗談めかして言ってるのだが、彼女は消え入りそうな声で「……すいません、先輩の気持ちは本当に嬉しいのですが……」と頭を下げる。
 その度に「おいおい、本気にすんなよ。いつもの冗談だよ」と否定してやる。
 すると彼女は「先輩の馬鹿っ!」と走って逃げる。
 いつもいつも同じことを繰り返してきた。
 でも、最初は冗談だったのに――あまりにも真剣な彼女を見ていたら……いつの間にか本当に彼女のことを想うようになってきた。
 嘘から出た真か、あるいは、冗談ばっかり言ってるウチに建前と本音の区別がつかなくなったのか。

 だから、俺はその日から冗談を止めた。




「よ、森中」
「おはようございます先輩」
 いつもなら、『今日も綺麗だな、森中』とか言っているところをただの挨拶をするようにした。
「おう、昼飯お前一人か?」
「いつもそうですよ、先輩。私は一人で食べるのが好きなんです」
「そうか、邪魔したな」
 いつもなら、強引に一緒に昼食を食べていたのだが、それもやめた。
「お、今日はお前もう帰るのか?」
「ええ。帰宅部ですから」
「そっか。それじゃあな」
 いつもなら、一緒に帰り、買い食いしたり、色んな寄り道に強引に付き合わせていたのをやめた。
 俺はただの先輩になった。
 彼女はただの後輩になった。



「どういうことなんですか?」
 その日、俺は後輩に呼び出された。
「何が、だ?」
「先輩は――私のことが嫌いになったんですか?」
「まさか。気持ちは前と一緒。そのつもりだよ」
 嘘だ。前よりもずっと強い。
 もう気軽にキミのことを好きだって言えなくなってしまった。
「じゃあ、なんで……今までと……態度が違うんですか?」
「いつも君が言ってただろ。『もうこんなことは止めてください』って『迷惑だ』って」
 俺の言葉に彼女は息をのんだ。
 分かりやすい。
 ほんと、高校生になってまで外面を作るのが下手だなんて見てられない。
 ――ま、そこも彼女がかわいいところの一つなんだけれど。
「それはその……確かに言ってましたけど」
「なんだ? お前は俺に嘘ついてたのか?」
 まごつく彼女に俺はわざと追い打ちをかける。
「そんなことは……ないです……けど」
 俺は待った。
 彼女の言葉を待った。
 押してダメなら引いてみろ、の精神だ。
 俺と後輩が見つめ合う。
 俺は何も言わない。
 すると、みるみるうちに彼女の目が潤んできた。
 直ぐに分かった。
 いつも見てるから分かる。
 彼女は意地を張って、なんでもない、て言い張るつもりだ。
 もうこれ以上、本当に付きまとわないでください、て言ってしまうつもりだ。
 彼女はどうしようもない意地っ張りで、自分から折れると言うことを知らない。
 でも、それがあまりにも分かりやすい。
 それで俺も再確認した。
 自分はこの分かりやすい女の子を放っておけないのだと。
「先輩、私は――」
「俺はお前のこと本当に好きだぜ?」
 彼女の言葉を遮り、俺は告げる。
「…………またそんな、いつもの冗談を」
「いつも? それはいつの話だ? ここ最近、俺はお前のことを好きって言ったことあったか?」
「……ないですね」
「冗談じゃないんだ。本当にお前のこと、好きなんだよ」
 彼女は黙り込んだ。
「返事……聞かせてくれないか?」
 彼女は顔を上げ、俺の顔を見つめ返した。
 彼女はちょろい。
 顔色を見ればすぐに何を考えているか分かる。
 彼女の答えは――。



 しまった。結局40分くらい書いてる。
 ぐぬぬ
 そして、また微妙な終わり方。
 哲学さん、恋愛物へただなー。
 ま、根本的に恋愛に興味ないんだろうなぁ。
 その弱点を補強するためにこういう風に毎日一本恋愛物書こうとしてるのだが、だめくさいなぁ。
 ま、詳しい反省は明日しよう。寝ます。