即興小説その11

 毎日短編書いて小説力をあげようキャンペーンその11。

(http://d.hatena.ne.jp/kaien+B/20130815/p1)

○今回のプロット
 めんどくさいのでお題メーカー使おう。

哲学は「屋敷」「風船」「憂鬱な子ども時代」を使って創作するんだ!ジャンルは「ギャグコメ」だよ!頑張ってね!
http://shindanmaker.com/58531

 マジで?
 じゃあ、
・憂鬱な子ども時代を過ごした主人公が見慣れない屋敷へやってきたら実は屋敷そのものが風船だった

 というメルヘンなオチで。


 世の中には夢も希望もない。
 キラキラと輝くものはすべて偽りで、まばゆい光なんて物はすべて醜さを隠すためのまやかしに過ぎない。
 それが世界の本当の姿なんて気取るつもりはないけれど、それがおおむね正しいと思ってる。
 俺の少年時代は最悪だった。 
 憂鬱に憂鬱を重ねて、軽い悲劇をエッセンスとして注ぎ込んだ少年時代。
 俺の人生は十六年しかないが、その十六年が百パー憂鬱だったのだから世界はもう、汚くて見にくくて泥臭い物だってことでいいと思う。
「うっそだぁ」
 不意に聞こえて来た声に俺は目を開く。
「やっほーい。希望の星でーす」
 自室の中空に何故か幼女が浮かんでいた。
 まばゆい光を放ちながら、にひひ、と笑っている。
「…………」
 俺は目を閉じた。そう、光という物はすべてまやかしで――。
「こらこらこらー、ダメじゃないですかー! せっかく夢と希望がやってきたのにぃぃ」
 俺は意を決して再び目を開けた。
 やっぱり幼女がパンツ丸見えで浮いてた。
「どもーす! 不幸な人に幸せを運びにやってきた死に神でーす!」
 おい、こいつ今死に神っつったぞ。
「お、いいことに気付きましたね! 希望の光は実は死に神が持ってるんですよ〜。これってトリビアになりますかね?」
 不思議なことに耳をふさいでも幼女のうっとうしい声は相変わらず聞こえてくる。
 更に言うと、俺は一言も話してないのに向こうは俺の考えてることが丸わかりらしい。
「いえーす。私はあなたの心に直接語りかけてまーす!」
 語りかけるというか、騙りかける、の間違いではないだろうか。
「え? それってどういう意味ですか?」
 意外と音声認識らしく、発音が同じだと分からないらしい。
 こいつは一体何の目的でここに――。
「はぁーいよくぞ聞いてくれました! これより黄泉の国へご招待!」
 幼女が手を振りかざすと途端に光が消えた。
 周囲が真っ暗になる。
 次いで体が浮き上がったような感覚の後――一おぞましいほどの落下感が体を包んだ。
「……ひっ」
 初めて声を漏らす。
 体が落ちていく。どこまでもどこまでも。
 昔階段から落ちたときのことを思い出し、恐怖が俺を支配する。あの時は――母親に落とされたんだったか。
「はぁいー、とうちゃっくぅー」
 再び聞こえた幼女の声とともに落下感は消えていた。
 体を起こすと見知らぬ館が目の前に広がっていた。
「……ここは?」
「死者の館<ヴァルハラ>でーす! どうですかー! 輝いてるでしょ! ぱないでしょー?」
 幼女の言葉に俺は押し黙った。
「……え? ヴァルハラ?」
 それってファンタジー的にはすんげー場所な気がする。
 が、俺はバカだからどんな場所かよく知らないぞ。
 一体どういう場所なんだ。
 ていうか、もしかしてこの幼女実はすごい奴なんじゃないのか?
「……俺をこんなところに連れてきてどうするんだ?」
「もちろん、魂を風船爆弾に加工して戦争の道具にするんです!」
 満面の笑みを浮かべる幼女に俺は顔を引きつらせた。
「クソの役にもたたない人生を送ったあなたに、死後は神々の最終戦争にて用いる兵器として非常に役立つ、輝かしい結末をご用意してあげるのです!」
 おい、この幼女いきなりとんでもないことを言い出したぞ。話がむちゃくちゃすぎる。
 一体何者なんだ。
「だから、死に神ですってばー。死の先を征く者を導くものですよー。ほら、あっちを見てください」
 幼女の指さした方を見ると大量の風船が並んでいた。
「あんな感じで、あなたの魂を加工させて貰います。ラグナロクの日は近いのでとっとと作業に入ります」
「う、うそだ! そんなのいやだぁぁぁ!」
 中空に浮かぶ幼女を振り払おうとするが伸ばした手はその体を透過してしまう。
 そのまま俺の右手はさっき見た風船に触れた。
ぱぁん
「あ?」
 間の抜けた音と共に風船爆弾が爆発した。俺の体が衝撃で吹き飛ばされるとと共に大量にあった風船爆弾が次々と誘爆していく。
 そのまま死者の館そのものが風船のようにふくらみ、爆発した。




 気がつくと俺は自分の部屋にいた。
 手元には花火大会で好きな女の子に渡せなかった風船が割れて落ちていた。
 そうだ、あの子が別の男にモーションをかけてるのを見てバカらしくなり、花火大会をばっくれて家に帰り、ベッドに潜り込んだのだった。
「……あれは夢だったのか?」
 意味の分からない夢だった。
 とはいえ、壊れた風船と共に鬱屈していた気持ちもなんだかすっきり消えて無くなっていた。
 俺は風船をゴミ箱に捨て、もう一度ベッドに潜り込む。
 ――世の中には訳の分からないことがあるのだから、もう少し頑張って生きることにしよう。
 意味の分からない納得と共に俺は再び眠りについた。


 油断したらまた変な話を書いてしまった。
 手癖で途中まで書いてしまい、オチがつかないままに強引にねじ伏せてしまった。
 これはメルヘン……になってないなぁ。
 でも、個人的にこんな訳の分からない話は嫌いじゃない。一般ウケしないと思うけどな!
 ……寝ます。