『西遊記』からの物語の作り方?

 ちまちまと色々と試しているけどなんだか上手くいかず。
 毎日「うまくいかない報告」だけだと寂しいので今日、参考文献的に考えたことをちょろっと書き残しておく。




 主従物で、と考えてて似たような古典を考えてぶち当たったのが『西遊記』。
 あれは三蔵法師という娘が旅のツレとして乱暴者の孫悟空、豚の猪八戒、河童の沙悟浄をお供にインドへ旅をする話。目的はありがたい仏教の経典をもらいに行くため。
 まず、少年向けとして書くなら三蔵法師は若い少女がいいだろう。
 でも、若い少女がわざわざ旅をするのに教典をもらいに行く、なんて地味だ。
 せっかくだから「なんでも願いを叶えて貰う」というご褒美があることにするべきだろう。
 で、そんな旅をして叶えたい願いってなんだろうか。まあ、若い子だし、「彼氏が欲しい」とかそんなもんだろう。
 ツレの孫悟空はどうだろう? そのまま猿にしてもいいのだけれど、戦いが強い猿のような野生児とかどうだろうか。尻尾があるとなおよい。けれども、あんまり野生児なビジュアルだと取っつきにくいのでどちらかというと素朴な田舎の少年、と言う感じがいいかもしれない。
 こうしてできあがるのが――『DRAGON BALL』です(マテ
 まあ、鳥山明先生は『DRAGON BALL』を書く前に『DRAGON BOY』という短期集中連載書いてるんだけどね。
 ここで若い娘が悟空みたいな野生児をどうやって仕えさせるように制御するか、と言うところでドラゴンボールが出してきたのが「ピーピーキャンディ」。
 ピーピーという言葉を聞くと下痢になってしまうというイヤなアイテムで、悟空はブルマにこれを食べさせられ、言うことを聞かなければピーピーと言う音を聞かされえんえん下痢を出す羽目になる。原作のお経を聞くと頭の輪っかが縮まって頭が痛くなるのを見事に現代化してますね(そうだろうか)
 猪八戒の翻案である豚のウーロンも後にピーピーキャンディを食べさせられ下痢で言いなりになるという。しかしながらこれはいいアイデアだと思う。エロ同人みたいな展開になっても「ピーピー」と言う音を聞かされるだけで下痢になるからね。エロに行く前にトイレに行ってしまうね。
 最初は飛行機とかバイクの旅になってたけど、途中で亀を助けることにより、亀の仙人から「筋斗雲」を貰ったり、浦島太郎モドキな要素もよい改編だと思う。
 そんな感じで初期のドラゴンボールは『ドクタースランプ』のいい感じの延長戦というか、童話めいた雰囲気をかもしだしてる。
 バトル要素も実はそれほどなくて、エッセンス程度な感じ。
 じゃあなんでそんなドラゴンボールががっちがちのバトルメインになったかというと色々と分岐点はあるけれど、個人的には芭蕉扇のエピソードではなかろうか。
 孫悟空は自分の育ての親の義兄弟たる牛魔王と仲良くなるが、牛魔王の家はずっと燃え続けてて自分でも入れない状態になっていた。そこで、亀仙人の持つ芭蕉扇を借りて風を起こし、炎を消そうとした。
 が、亀仙人を訪ねると芭蕉扇は鍋の下敷きにした後どこにおいたか分からなくなってしまったとか。じゃあどうするか、となるとなんと亀仙人が直々に火を消してくれるのだという。
 ハワイみたいな離島にすんでる、アロハシャツを着た煩悩まみれの仙人のジーさんに果たして何が出来るのか。
 一同が見守る中、気合いをためた亀仙人は突如として筋肉がムキムキっと盛り上がり、北斗の拳の世界観みたいな筋骨隆々な姿に。それを見て観客の一人が言う。
「でるぞ……亀仙人様の……かめはめ波がっ!」
 かめはめ波て。アロハシャツのおっさんが、ハワイのカメハメハ大王っぽい技を出すってなんだよ……なんて突っ込んでる余裕はない。
 緊迫した空気の中、亀仙人の元へ力が、気が収束されていく
亀仙人「か……め……は……め……波っっっ!」
 裂帛の気合いと共に亀仙人の手からは膨大なエネルギーの波が!
 なんてこったい! アロハシャツ着てたエロジジイが服を脱いでムキムキになったかと思ったら手から波動砲撃ちやがったよ!!
 その力は余りにも凄まじく、結果的に山一つまるまる吹き飛ばすということに。
 正直、後々の天下一武道会でもここまでの破壊力の『かめはめ波』はほとんど撃たれず、サイヤ人編になるまではこのドラゴンボール二巻の亀仙人かめはめ波が破壊力としてはトップランカーに思える。実際には二度目の天下一武道会ですでに悟空は亀仙人より強くなってるし、対ピッコロ戦では「超かめはめ波」を編み出すに至ってるのだけれど、描写的に山一つを吹き飛ばすなんて亀仙人くらいだ。あーあと、一回目の天下一武道会でも亀仙人様は月一つ吹き飛ばしてた。
 さすが武術の神、武天老師様だぜ!
 こう考えると、ピッコロ大魔王に負けたのが不思議なくらい。いや、あのタメの長い本気の「かめはめ波」を若返ったピッコロ大魔王にはあてること出来ないか。なんのかんので魔貫光殺法以上にタメが長いのね、亀仙人の本気のかめはめ波
 ……ってメッチャ話が逸れてる。



 話をざっくり戻すと女の子が居て、僕を連れ回す、というフォーマットとして西遊記は結構優秀だなぁと思った。そこから突如としてアロハシャツのじーさんが手から波動砲を出して山一つ消し飛ばす展開になったのは鳥山明先生が天才と言わざるを得ない。その後も実はほのぼのした冒険物に戻るけど、最終的には旅先で悪い奴と戦っていき、バトル物へと揺り戻されていくんだよねぇ。
 ……って、ドラゴンボールの話はいいんだって。
 女の子が男の家来を連れ回す的なフォーマットなら涼宮ハルヒだって見方を変えれば似たような物。うまく学園物として落とし込んでる。ま、どっちかというとアレは、女主人に連れ回される――というフォーマットに見せかけてその主人に知られないように影から事件を解決していく変則的な構成なんだけど。
 まあラノベ的には、まず「リナ・インバース」が来るべきか。あれも最終的にはリナの手から波動砲ならぬ重破斬<ギガ・スレイヴ>がぶっ放されて物語は終わるのだけれど(コラ




 なんにせよ、色々と考えてて最終的に思ったのは、「あそこでかめはめ破を出した鳥山先生すごいなぁ」と言う辺りこの考察は失敗に終わってる(笑)
 いや、もう一つ。
 女性に従う話だと、女性に従わせられる、あるいは刃向かえないセーフティをある程度用意しておいた方がいい。惚れた弱みだけで突っ切れなくもないけれど、刃向かえば世界が滅びるとか、ピーピーキャンディがあるとか、一度死にかけたけど妹に魂の半分を分けて貰うとか、妹に魔法力の封印・制御がかけられた上に妹愛以外の感情が欠落してしまうとか……。
 今のアイデアだとそこら辺ちと弱いな、と考え直す。
 ……我ながら実りの少ない考察だなぁ(自虐