書きたいことははっきりしている

 哲学さんが今書きたいと思ってる話は構造自体は非常にはっきりしてる。



 とある美少女が一人の一見さえない男に惚れる。
 学校でも目立たないが、何故か器の大きさを感じられる少年に惹かれ、告白をする。
 しかし、振られてしまう。
 ところが、次の日学校外で、その少年が色んな少女に言い寄られてるのを目撃する。
 実は、彼は学校外では名の知れた『実力者』であり、彼の魅力に惹かれて様々な女性がアプローチをかけている主人公気質の少年だったのである。が、彼はそれらのアプローチをすべて断っている。
 何故かというと、その彼のハーレムの中心――正妻ポジションには誰よりも見目麗しい男の娘がいて、少年は他のどの少女よりもその男の娘との友情を大切にし、断っているからだ。
 故に、主人公の美少女は、その少年と恋人になるために、男の娘と対決する、というお話である。




 メジャー作品で一番近いのはきっと、「とある科学の超電磁砲」だろう。
 主人公は御坂美琴で、惚れた少年は上条さん。だが、上条さんの身辺を洗っていくと、実は様々な女性が彼にアプローチをしているが、成功してない。何故かというと、インデックスという正妻ポジションがいるから。
 人物配置的にはこれが一番分かりやすいだろう。
 つまりは、「とある」本編でやってない、御坂美琴とインデックスが上条さんを巡って争う話ような話――を書きたい訳である。



 つっても、別に「とある」の二次創作を書きたい訳じゃない。あくまで、構造が似てるから例に出しただけである。まあ、影響がないか、と聞かれたらゼロとは決して言えないけれど。
 どっちかというと、「化物語」で戦場ヶ原さんがアララギくんに惚れるも、何故かどの女の子ともくっつかないなーと思って調べてたら、実は彼には忍野忍というなによりも大事な存在が居て、そのせいで彼女を作らないと知り、戦場ヶ原と忍野忍アララギくんを賭けて戦う、と言った方が分かりやすい気もする。



 なんにしても、一言で言えば、「少年漫画系のヒロイックな少年に惚れた少女の一世一代の恋」が描きたい訳だ。
 陳腐な言葉で言えば、「世界を救うヒーローに惚れた少女の戦い」とも言える。
 彼女が惚れた相手は主人公気質で、彼女と出会う前に既に様々な冒険をしたり、世界の危機を救ったりしてる英雄である。なので、彼に出会った男は熱い友情を抱いたり好敵手になるし、彼に出会った少女は片っ端から彼に惚れたり恩人として厚遇することになる。ライバルはとてつもなく多い困難な道。
 そんな話を哲学さんは書きたいと思ってる。
 なので、話の流れ的には「主人公振られる」→「実は惚れた相手はヒーローで、学校の外ではモテモテ」(自分が惚れたのは間違いではなかった)→「そのヒーローを巡って、正妻ポジの相手と戦い、ハーレムを突き崩そうとする」の流れになる。
 けれども、哲学さんの描写力・構成力がそこらへん追いついてない。
 正直、惚れた相手はライトノベルの王道の類型なのだからもっと上手く情報圧縮できると思う。
 主人公が惚れた相手が「ああ、こいつは上条さんとかアララギくん系の奴なんだな」と読者に一発で示さなければならない。
 かつ、ヒロインもそれに見合った相手である、というキャラクターとしての「格の高さ」を示さなければならない。例えば学園都市のレベルファイブ第3位とか、異常に攻撃的なドSツンデレとか、かつて勇者と共に戦った四戦士の一人の女騎士であるとか、ガンゲイルオンラインで特級のスナイパーだとか……。
 前回はそこら辺はごっそり置き去りにしたまま配置したキャラクターが発生したイベントだけをこなしてる状態となってて、その関係性の構図が見せられてなかった。
 実に甘い。プロットの表面をなぞってるだけで、説得力は上滑りで、納得力のない話になってる。ていうか、初期設定と見比べると書いてるウチにどんどん平凡なキャラクターになってってた。むう、駄目すぎる。





 とまあ、そこら辺を反省して書き直そう、という備忘録。
 うむ、頑張ろう。