即興小説その3

 毎日短編書いて小説力をあげようキャンペーンその3。

(http://d.hatena.ne.jp/kaien+B/20130815/p1)

 果たして30分でどこまでいけるか。




「お前なんで脱いどんねん」
 どん引きである。
 まさか、こんな公衆の面前で服を脱いでる女の子に遭遇するとは思わなかった。
 女の子……というか、ガキだ。
 小便臭い、小学一年か二年生くらいのガキ。
 裸になられても性的な興奮よりもどん引きが先立つ。
「え〜? 撮影〜?」
 唖然とする俺を尻目にそのガキはおもむろに目の前にあるノートパソコンに向けてポーズを取った。
 ぱしゃり、と彼女の裸がパソコンに記録される。
 ――頭が痛くなってきた。
「はいはい、暑さで頭おかしくなったんですね。服を着ろ」
 思わず俺はノートパソコンの蓋を閉じた。
 なんと、このガキは、電気屋さんにある展示品のパソコンで自分の裸を撮影していたのである。
「なにすんー? のー? とっとーねんでー! じゃませんとーてー!」
「うるさい。電気屋さんのパソコンはそんなことをするための物じゃないわい」
「えー? パソコンてこうつかうんじゃないのー? いつも家でやっとーでー?」
 舌っ足らずなガキの物言いに俺は頭が痛くなった。
 善悪の区別がつかないとはまさにこういうことを言うのだろう。
 自分が何をしてるかまるで分かってない。
「とらせてー、とらせてー、かわいい写真とらせてやー。とったら褒められるねんでー」
 誰に?
 だいたい、どんな家庭環境だよ。
 わざわざ股間を強調させて写真撮ろうとするとか、教育に悪すぎる。
「お父さんの仕事は?」
「じたくーけいびーん」
 ……またイヤな単語を聞いた。
「じゃあ、お母さんの仕事は?」
「かめらうーめぇぇん!」
 カメラマンでないのは母親の意地なのだろうか。
 なんにしても、あんまりいい家庭環境でなさそうなことがよういにうかがい知れた。
 どうするべきか。ここで俺が彼女に蕩々と人の道を説くべきか。
 とはいえ、俺はこの子とは赤の他人だし、第一、この電気屋さんの店員でもない。
 けれど、公衆の面前でいきなり服を脱ぎ出す幼女を放置できるほど心がすれてもない。
 というか、何故周りの大人どもは止めないのか。
 割って入った俺のことも珍獣でも見るような目で見てくるのか。
「……この際、キミの家のことは知らない。ただ、家以外でこんなことしちゃダメだ」
「なんでー? なんでー? なんでなんでー?」
 しゃべってるうちになんでーという発音が気に入ったのか、当初の質問の目的を忘れたようななんでなんでと連呼するガキ。
 ああ、殴りたい。しばきたい。
 俺は新型のAirMacExpressを見に来ただけなのに。
 ていうか、初犯じゃないのか。
「家族の前以外で裸になるのはダメだ」
「なんでー」
「そういう決まりだ」
「なんでー」
「それは……って脱ぐな! よだれ垂らすなっ! というか、人の話きけ!」
 おかしいな。このくらいの子どもってもっと頭よかったはずだが。
 まるで獣だ。
「じゃあ理由変更だ。俺はお前の裸みたくないので、やるなら外でやりなさい」
「わかったー!」
 そういって女の子は素直に店の外に出て行った。
 外でなんだか悲鳴が起きてるが、気にしない。
 …………。
 それでもちらりとみると裸の女の子が歩いてても誰も指摘せず、遠目に彼女を見ながらも放置しているようだった。
 あの女の子、もしかしたらいつもこんな感じでまわりの人に気にされてなかったのかも知れない。
 女の子は通りの向こうへ走っていったが、彼女を追いかける人は誰もいなかった。
 いつも通りの街がそこに戻っていた。
 少なくとも、あんな変な子がひとりくらいいたところで、みんな気にしない……そういうものなのかもしれない。
 今度は今までとは別種のイライラが募ってきたが、俺は気にしないことにした。また一つ汚い大人になった気がした。



 なんぞこれ。
 それよりも聞いて下さいよ。
 今日、某パソコンショップで、Macの展示機で自分の裸を撮影する女児に遭遇しました。
 止めました。
 邪魔すんな、て膝叩かれました。
 ダメだって言ってたら父親らしき男が女の子を抱きかかえて逃げていきました。
 ……事実は小説よりも奇なりです。
 哲学さんは白昼夢にあったのかと思いましたが、どうやらそうではなさそうです。
 なんなんでしょうね。
 イヤな世の中になった物だ、とか軽く思いました。いや、たぶんあの親子の問題なのでしょうけれど。
 技術が進んでも、それを悪用というか、変な方向に使う人もいるのだなぁ、とか。
 そんなよく分からない実体験を元になんだかよく分からない短編を書いてしまいました。
 イミフ。
 実は哲学さん、自分で小説書くよりも、自伝を書いた方が面白い、と評判の波瀾万丈属性持ちなのですが、こんなに意味分からんことに遭遇したのは久しぶりです。
 いつもなら「あーこれは小説のネタに使えるな〜」とか思うんですけど、今回はただただ呆然した後、「どんな時代やねん」と軽く世界にイラッとしまして……まあネタとしてうまく消化できてませんでしたね。
 もっとダーティな話にも出来たけど、シャレにならないので止めました。
 みなさん、とりあえず、公衆の面前で裸になる女の子がいたじっと眺めるのではなく、止める側の人間になりましょう。(そんなのに遭遇する人なかなかいねーよ)
 とりあえず、軽くあの子の将来が心配な哲学さんでした。(もう日記だこれ)