即興小説その4
毎日短編書いて小説力をあげようキャンペーンその4。
(http://d.hatena.ne.jp/kaien+B/20130815/p1)
そういえば、昨日はなんか勢いで書いてしまって恋愛要素なかった。
よし、今日はなんか恋の話でも書こう。うん。
「以上の理論により、あなたが私に惚れていることが証明される訳です」
自信満々でメガネをくいっとあげる相手に対し、私はなんて言えばいいか分からなかった。
でも、黙ってるのもなんなので声を出す。
「えー」
唖然とする私に、相手は更に言葉を続けてくる。
「つまり、QEDってことですよ」
こいつ、言葉遣いは丁寧だけど馬鹿だ。
まあ、留年してる私が言えた義理じゃないけど。
「えーと、運動会でおぶってやったのはお前が日射病で倒れてたのをたまたま近くで見つけたからだぞ」
「いいえ、僕に惚れてるからです」
「こないだ、じっと見てたのはお前の股間のチャックが空いてたからだぞ」
「いいえ、完璧な僕がそんなミスを犯す訳がありません。あなたが僕に惚れていたからです」
この自信はどこからくるのだろう。
私の周りには何故かこんな変な男がよく集まる。
三回目の高校一年生をしてるせいだろうか。
なんというか、こいつ本当に学年一位なんだろうか。
「なんていうか、自分はなんでも知ってる、て面(ツラ)だな」
「なんでもは知りませんよ。ただ、どんなことであっても、僕に計算・証明できないものはありませんっ!」
「…………」
なんだかよく分からないけれど、すごい自信だ。
「じゃ……じゃあ、明日の天気は?」
「ふふふ……こういう話を知っているでしょうか
現代のスーパーコンピューターを持ってすればあらゆる過去のデータとリアルタイムの情報を用いて、49%の確率で明日の天気を当てることが出来るのです」
「49%て……うわー、コインの裏表の方が確率高いじゃねーか」
とどのつまり、分からないんだな。
なんて遠回しな表現なんだ。うざい。
「ええい、なんで分からないですかね? 先輩が惚れているのは、いつも勉強を教えている彼でなく、僕なんです!」
「…………もしかして、あんた私に惚れてる?」
適当に放った言葉だけれど、しかし効果はてきめんだった。
彼は急に顔を真っ赤にし、汗をだらだらと流しながらメガネをずりあげる。
「ばばばばばばばばば……馬鹿なことをいいいいいいいいいますねねねねねねね。
てれってれってれっ……ごほん、その、照れ隠し……ぼくは、そのえーと、嫌いじゃないですよ」
うわー、分かりやすい。
二回留年してる私でも分かるぞ、そんな態度だと。
きっと、こいつは勉強ばっかりして頭が馬鹿になったのだろう。
可哀相に。
「そっか。あと、私はべつにあんたのこと好きじゃないから。話は終了ね」
「ちょっちょっ、ちょっと待って下さい!」
背を向けた私に勉強馬鹿が慌てた声を出す。
「なによ?」
「………………」
彼は神妙な面持ちになり、言い放つ。
「すいません、惚れたのはボクの方です。付き合って下さい」
「ごめん、無理」
私の即答に勉強馬鹿は愕然とする。
「なっなぜ……」
「いや、だって話噛み合わないし」
「そんな馬鹿な! 僕は学年で一番知識と、学力と、知性を持ってるんですよ!
そんな僕以上に話を合わせられる人間がいるでしょうか? いや、いるはずがありません!」
メガネをくいっくいっと上下に動かしながら強調してくる勉強馬鹿。
うーん、知識と学力はあって知性はなさそうだなぁ、この子。
「あんた……自分のレベルでしか喋れないじゃない。
きっとあんたは鳥料理が食べたい、と言っても肉料理を出してきたり、肉料理が食べたい、て言っても魚料理を出してくるような男でしょ?」
「え? なんでここで料理の話が出てくるんですか?
関係ない話をして誤魔化さないで下さいよ」
うわぁ、殴りたい。
いつも連(つる)んでる男だったら間違いなくぶん殴ってるところだ。
しかし、相手はメガネをしている。殴ったら手が痛い。おかげで手が出せない。
この男はそれを勘違いして「他の男は殴るけど、僕だけには優しいですね」とさっきも言っていた。
なんにしても、この読解力のなさでよく学年一位をとれてるな。
あ、国語の一位は私のツレの方だったか。
なんにしても、理系男子が嫌いになってきた。
「まあいいわ。じゃ、付き合ってあげる」
「えっ、ほ、ほんとですか?!」
文字通り、飛び上がって喜ぶ彼。
が、私はそれを手で押しとどめる。
「でも、ひとつ条件があるの」
「……なんですか? なんでもしますよ!」
「柔道で私に勝ったら、考えてあげる」
「あ、すいません、諦めます」
うわ、早い。
「さっきなんでもするって……」
「あー、人には向き不向きがあるんですよ。僕は頭脳労働者なんで。頭を使うこと以外無理です」
そろそろ殴ってもいいかな? むしろ、殴るべきよね。
色々と考えたけど、顔面をやめて腹を殴ればメガネも潰れないし。いいかな。
「ま、諦めるならそれでいいわ。この話は終わり」
もっと長引くかと思ったけど、意外に早く諦めてくれてよかった。
「でも、最後に一つだけお願いがあります」
「なによ?」
「先輩が僕に惚れてる理論が間違ってることを証明してもらえませんか?」
「……よし、お前メガネ外せ」
まずはその幻想をぶちこわす為に私は拳を握りしめた。
了
やべぇ、30分だと話がまとまらない!!
また投げやりなエンドになってしまった。
うーん、これはいかんなぁ。
特訓になってない。
とりあえず、哲学さんの書き方として、最初は出オチのシチュエーションをつくって、なんでそんな状況になったのかを書きながら探りつつ、繋ぎの会話をある程度続け、後半で前半の会話の中から伏線に使えそうなものをピックアップして逆算的に結論を出す……みたいな方法をとってる。
でも、そこら辺の「波に乗る」感じが30分くらいしてようやくスタートみたいなところがあって、「よし、そろそろこの話がどういうものか分かってきたぞ」と言うところで30分経ってしまってて話をまとめるだけの余力がない。
うーん、前後編にしようかしら。
それとも、本文じゃなくて毎日プロットを書く方へシフトするか。
またレギュレーションを考えよう。