即興小説その10

 と、言う訳でもっと簡単な、四コマ的なショートショートを書こう。
 内容的には

・後輩に呼び止められる
・告白される
・断る
・理由を話す

 の流れで。



「せんぱいせんぱいせんぱーい」
 突如として後輩に呼び止められる。
 どうしたのだろう。
 彼女はいつも元気なのだが、今日は思い詰めた顔をしている。
 彼女はいつも脳天気で、イヤなことがあってもすぐに忘れるし、いいことがあってもすぐに忘れてしまう――まさに今を生きるタイプの人間だ。
 こんなに思い詰めた顔をしているのは実に珍しい。
「一体どうしたんだ?」
 なるたけ優しい声を意識して返事をしてあげる。
 しかし、返ってきた返答はこちらの予想だにしない答えだった。
「すいません、実は前から好きでした! 付き合ってください!」
 俺は唖然とした。
 目の前が真っ暗になる。
「なんでだよ! 断るよ!!!」
 思わず反射的に返事をしてしまう。
 俺の返事に後輩は愕然とした。まさか断られると思ってなかったらしい。
 実に脳天気な彼女らしい返事だ。
「そんな……今日は朝から何故か気分がいいから、その勢いのまま、告白しようと思ったのに!」
「ええい、アホかお前は!!!!」
 俺は思わず叫んでいた。
「俺達もう恋人同士だろうが! 昨日、お前の告白受け入れただろ!!」
 彼女はぽかんとして俺の顔を見ている。
 彼女は腕を組んでしばらく考えた後、こう呟いた。
「えへへ……そうでしたっけ?」
 こいつ……昨日は幸せすぎて、舞い上がったあげく告白成功したことをすっかり忘れてしまってたんだな。
 今を生き過ぎだろ……。
「じゃ、昨日の告白はなしで」
「なんでだ?」
「覚えてないので! もう一回好きって言ってください!」
 こいつ……俺の一世一代の返事を、メッチャどきどきしながらの返事をすっかり忘れてるのか。
 軽く泣けてきた。
「しゃーねーな」
 なら、もう忘れないくらいの返事をこいつに刻まないとな。
「後一回しか言わないからよーく聞けよ」
 とはいえ、なんだか明日も同じことを繰り返してそうだ。
「えーずるーい。何回でも好きって言って欲しいですぅ」
 と不平を漏らす後輩。
 ダメだ。このままだと明日も同じことになってそうだ。
 くっそ、どうしたら……どうしたらいい?
 迷った末に――考えるのを諦めた。
「今日一日お前のことが好きだ」
「へっ? なんですかそれ?」
 怪訝な顔をする後輩に俺ははっきりと言ってやる。
「明日になって忘れるなら長期契約はなしだ。短期契約にする。
 明日また契約更新の為に告白しにこい」
「えー! そんなの、毎日告白するなんて……告白する側の身にもなってください!」
「イヤなら明日も忘れないことだな」
「分かりました。明日になっても、恋人になったことは絶対忘れませんからね!!」
 後輩の言葉に俺は思わず笑みを浮かべた。
 さて、明日の後輩はどうなっているだろう。ちょっとだけ楽しみだ。
「じゃ、とりあえず今日の分、恋人としての責任を果たしてやろう」
 そう言って俺は彼女の唇を奪ってやった。出来うるならば――明日は覚えていて貰えるように、と祈りながら。



 アホ娘です。
 アホの子を投入しました。
 どうでしたでしょうか?
 本当は「俺達もう恋人同士だろうが!!!」のところで「了」てつけるつもりでしたが、なんか寂しくなってつけたしてしまいました。
 まだまだ哲学さんも短編力が足りない。
 その代わり、今日は25分くらいで書きました。やったね!
 ……寝ます。