本日の執筆分

 昨日の部分をやや書き直しつつ、二章の終わりまで。



 ――なるほどそういう風にロジックを立てて推理するのね。
 私にはそこまでの考えは至らなかった。彼女といい、トモシゲといい、ゲーマーと言う人種と私ではゲームに対する経験値や情報格差が激しいようだ。
 ――無敗のゲーマーを相手取るには確かに私は役者不足みたいね。
 自分の無力改めて思い知らされる。だからといって諦めるつもりはない。
 ――むしろ、これは先人に学ぶいい機会ね。
 先達の技術をよりよく盗むのが上達の近道。トッププレイヤーと言われる彼女の力、存分に見せて貰おう。
「どうします? 一旦公園を出ますか?」
「そやな。これはゲーム大会やけど、クローズドベータテストも兼ねとー。システムに不備があってもおかしない。とっとと逃げるで。バグに殺されてゲームオーバーはヤやし」
 言うが早いか彼女は歩き出す。下手に周りを刺激しないよう、ゆっくりとだ。私もそれに続く。
 撤退を即断したものの、フェスタはやや残念そうだった。小声で「メッチャ美味い狩り場やねんけどなー。少人数だと圧殺されてまう」とぼやいている。
 こうして歩いている間にも、そこかしこで、何もない空間からポコポコとモンスター達が出現している。あまりにも多くて、画像処理が追いついてないのか、モンスター達の表示がややぶれたりカクカクになり始めていた。
 ゲーム開始時のチュートリアルで「異世界の来訪者達によりこの世界は侵食されてしまう。それを救うのがあなた達プレイヤー《サイバーブレイヴ》なのです」と説明されたが、確かにこれは相当酷い。二・三匹なら可愛いし、放っておいても問題ないと思うが、ここまで来ると移民問題、難民問題にまで発展しそうだ。ロスのあるカリフォルニア州は多くの移民によって構成されており、そのおかげで様々な弊害があったと歴史の授業で学んだことを思い出す。
 ――むしろ、ここまで来るとゲルマン大移動ね。歴史の先生だったらこの状況を見てなんていうかしら。
《レッカ様大変でございます!》
 と、今更ながらに私の相棒であるサムライペンギンが警告を発してくる。
《感じますか、このサイバーパワーの増大をっ! 危険な兆候ですっ!
 この空間に満ちるサイバーパワーを利用して、高位のサイバリアンがっ!》
 私と同じくフェスタも自分の相棒であるカルガモ突撃兵からの言葉を受け、立ち止まった。
 瞬間、狙い澄ましたかのように天を衝(つ)く光の柱が公園の中心に現れ、光の爆発が起きる。視界が光に埋め尽くされ、私は思わず目をつむった。
 そしてゆっくりと目を開いた時――私は水の中にいた。
 驚きに口を開くとごぽっ、と大きな空気の泡が口から溢れ、上へ昇っていくのが見える。
「えぇぇぇぇっ?! 嘘っ?! 溺れ――」
 驚きつつ、慌てて息を止めて自分の体を確認する。しかし、体を動かしても水圧などの抵抗は感じられず、肌や衣服に濡れた感触はない。だというのに周囲はどう見ても水没している。
「落ち着きーや。これはゲーム映像や」
 フェスタの言葉に私は遅まきに事態を理解した。試しにゴーグルPCを外すとそこには元の寂れた公園の姿があった。ゴーグルPCをかけ直すと再び水没した公園の姿が見える。
「…………最近の映像ってすごいですね」
「ホンマやで。さすがにアタシもびっくりしたわ」
 赤面しつつ、フェスタに話しかける。ご丁寧に喋るごとに口から泡が溢れ、上へ昇っていく。それにつられて私は上を見た。
 ――ああ、陽の光が遠い。
 透明度が低いのか、とても薄暗い。まるで水族館の中にいるような気分だ。見回すと公園そのものがドーム状に仮想の水に包まれている。ドームの天頂では陽の光が揺らめくのが見えた。思わず泳いでその光を追いかけたくなるが、あくまで見た目だけなので上に昇ることは出来ない。
「おい、気をつけーや」
「はい?」
「あんだけおったモンスターども、おらんよーなっとーで」
 目を鋭くさせ、周囲を警戒するフェスタに遅れて私も周囲を見回した。確かに彼女の言う通り、先ほどまで周囲を埋め尽くさんばかりいたモンスター達の姿が消えてなくなっている。ある種、私達にとっては都合のいい事態だが、フェスタの表情を見る限り、余りいい傾向じゃないようだ。
 気を引き締め、どうするべきかフェスタに問いかけようとした時、公園の中心から火山の噴火のごとく大量の泡が噴き出した。視界がぶれ、地震が起きたかのよう。そして泡の中心から身の丈五メートルを超える巨大な人魚が現れた。
「やっばいわこれ。どうみてもボスイベントやで」

つづく



 うーん、脳内に思い描いた情景がどうも上手く描けてないなぁ。テンポ悪い。書き直したい。ぐぬぬ
 でも、ともかく先へ進む。