設定を詰め込みすぎている

 とりあえず、第一章のあらすじだけでも軽くまとめると以下の通り。

 2058年、世界中で超能力者が増えつつあった。
 いつも思いつきで行動する少女――比良井遊奈は超能力者になれる噂を聞いて隕石の墜ちた都市にある廃墟街へ向かうも謎の組織にあっさり拉致される。失言の連続により超能力者に危うく殺されかけるが、宇宙を目指す魔法使いを名乗る浪人生――新城法助に助けられた。遊奈は一目惚れをし、求婚するが即断られる。
 少子化の酷い日本では法整備により少年少女の早婚が促進されているのだ。遊奈の友人二人も既に結婚している。遊奈は法助を諦めず、受験勉強中の法助に会いに行き、猛烈アタックを開始する。
 あまりにもしつこい遊奈に法助は自分に勉強で勝てたら友達くらいにならなってやってもいい、と勝負を持ちかける。意外と頭のいい遊奈はあっさりと法助に勝利し、友人になる権利をゲット。法助と一緒に晩飯を食べに行くことになったが、その途上で超能力者に襲われてしまう。
 

 単純なプロットの流れとしては

悪党にヒロインが襲われる。

ヒーローが助ける。

ヒロインは一目惚れするが、断られる。

ヒロインが猛アタック

多少仲良くなる。

再び敵に襲われる。

 と言うだけの話だが、かなりごちゃごちゃしてしまっている。
 あまつさえ、ヒロインがそれほど可愛く描写されてない。
 ヒロインを嫌がる法助に共感が誘導されている。
 おかげであんまり面白くなくなっている。
 というか、設定面でも、超能力と魔法使い云々よりも、政府の進める未成年の早婚政策の方が面白くてそっちに目が行くと思う。
 バトルものにするより、恋愛物としての設定の方がすぐれている感じ?
 このちぐはぐな感じで物語が上手く進められていない。
 一応、それぞれの設定にはもちろん意味があって繋がってはいる。

・日本は少子高齢化で滅びの道を歩んでいる。
・その対策として早婚政策が行われている。

・魔法使いは法助が最後の一人。子供が生まれても魔法の能力が引き継げない。魔法使いは滅亡する。
・超能力者は血縁が関係ない。老若男女ある日突然目覚める。高齢化が進もうが自然に増えていく。
・魔法使いは遺伝子操作によって生まれているコーディネイター。非常に科学的存在。
・超能力者は遺伝子関係なく、ある日突然目覚める。超能力者と一般人に遺伝的差はない。非常にオカルト的存在。
・風潮として、跡継ぎを残すために若者達は早婚を目指す。
・特に、隕石の墜ちた街――蛍河市ではいつ死ぬか分からないから早めに結婚しておけ的な風潮はある。
・法助は自分の跡継ぎを残すことよりも、自分の夢、宇宙へ行くことを目指している。
・だが、過去に自分の夢のために女の子を見捨てた経験があり、それ以来女の子を見捨てられない。
・結果、法助は自分に恋愛を禁じているのに、女の子を見捨てることが出来ないという瑕疵がある。
・人口の減る日本とは対照的に、世界は人口爆発が続いている。
・人口は増えているが、宇宙開発には向かわず、あくまで地球環境を整えて住みやすくするために科学技術は発達している。
・結果、宇宙開発は遅れており、有人惑星探査ももう五十年以上行われていない。
・特に蛍河市なんかは、宇宙開発なんてもってのほか的に思われていたり。

 てな感じで、色々と物語のラストに向けて、「超能力者・魔法使い」の対立構造を横軸に、縦軸に「少子高齢化」、その上で宇宙開発がZ軸な感じで組んでいる。
 けど、そこまで組み込むよりはラノベ的にはただ単に「超能力者vs魔法使い」のバトルか、「少子高齢化で結婚が推奨されてる世界での恋愛物」のどっちかに的を絞った方がよりラノベ的。
 よほど上手くまとめないとこれを着地させるのは難しい。
 ……でも、書きたいんだよねぇ。